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※番外 六年前の父と息子の会話

読み飛ばし可の番外です。

読み手さんからコメントにて、レイチェルとアーノルドの婚約に関しての父親の言動が如何なものかとのご指摘を受けました。

読み返してみたところ、私も如何なものかと思いました。いや……なんか……すみません。

という事で他にもご不快のまま読まれている方が居るかも知れませんし、ちょっと私の脳内補完用の話を投下してみることにしました。

脳内補完用なのでレイチェル視点の一人称ではなく、彼女の知らない情報も含まれます。

どうしても伏せたい部分は濁していますが、本来レイチェルが本編の終盤で知り得る情報もそのまま垂れ流しです。

なので、そんなに主要人物以外の言動は気にならないよ、あくまでレイチェル目線で話を読むよという方には、この話は読まない事をお勧めします。

無責任で申し訳ないのですが、読む読まないを個々人で選んで頂ければと思います。

「ロリコンは今すぐ全員死滅しろ。」

 リベティア国一の極悪顔と名高いそのご面相を歪めて、ラドルフ家当主ロドリゲスはドスの効いた声で吐き捨てた。

 そんな父の、大の大人さえ腰を抜かしかねない殺人光線を真正面から受け止めて、長子レオニールは秀麗な顔の眉間に縦皺を刻む。

「俺はロリコンではありません。」

 確かに愛しい婚約者は今年十三歳になったばかりだが、レオニールとて十六歳なのだ。ロリコンの誹りを受ける謂れはない。

「お前の事じゃねぇよ。」

「では唐突になんだと言うのです。」

「王弟。」

「王弟……スフィアラナ様ですか?」

「レーチェを嫁に欲しいと言ってきた。」

「はあッ!? レーチェは十歳ですよ!?」

「だからロリコンだっつーんだよ。」

「え、だって王弟殿下は御年……」

「俺の二つ上だから四十一だな。」

 それはそれは……、開いた口が塞がらなければ、言うべき言葉も見当たらない。

「それで、どうするのですか父上。」

「断ってるに決まってんだろーが。」

 父の言葉にレオニールはほっと息を吐く。無垢な可愛い妹が、奢侈と不摂生で醜く肥え太った四十男に嫁ぐなどぞっとしない。

 しかし、「断った」ではなく「断っている」という表現なのが気に掛かる。

 父を見遣れば、彼は盛大に顔を顰めた。

「しつけーんだよ、あのクズ。何度も何度も何度も何度も断ってんのに、レーチェレーチェレーチェレーチェ、お前がレーチェをレーチェと呼ぶんじゃねぇよ。」

 何度お断りだと言っても、あちらは王族こちらは侯爵。断りの文句にも遠慮が出て、決定打に欠けるのだ。

「という事で陛下を巻き込むことにした。」

「ああ、そういえば陛下は何と?」

「必死こいて王弟を諌めてるよ。ふざけんなとか、自分を鑑みろとか、誰が好き好んでとか……、でも聞きゃしねぇ。」

「陛下のお言葉も効かないのですか……。では、どうするおつもりで?」

「レーチェに婚約させる。」

「はあッ!?」

「もちろん王弟とじゃないぞ。」

「ああ、良かった……。ではなく、どういう事です。」

「適当にレーチェと年の近いのを、勅命でもって婚約させる。そうすればいくら王弟でも手は出せない。」

「そりゃそうでしょうけど。相手は?」

「グランフィルスんとこの坊。」

「……確実にレーチェとは合いませんけど。」

「しょうがねぇだろ。侯爵家のウチでさえ、これだけ苦労させられてるんだぞ? ウチより家格の低いトコとの婚約じゃ、確実にぶっ潰される。」

 父の言う事は分かる。分かるが……。うーん、と唸り声を上げながら眉間を揉むレオニール。

「良いんだよ別に。どうせ折を見て婚約破棄させんだから。」

「は? そんな事可能なんですか?」

「俺がゴリ押すんだから可能だ。王弟には言葉が通じないんでお手上げだったが、陛下やグランフィルス公爵家が相手ならどうとでもなる。」

 ニヤリとふてぶてしい笑みを浮かべる父を見て、レオニールは肩を竦める。ご愁傷様です、国王陛下。

「レーチェとアーノルドの婚約に、陛下や王太子殿下がやたらノリノリなのが気に掛かるが、まぁ背に腹は代えられん。とにかく王弟を回避するのが先だ。」

「それには同意です。しかしグランフィルス公爵家が応じてくれますか? いくら陛下と王太子殿下がノリノリと言っても、破談前提の婚約だなんて。」

「破談になったところで、男の側には傷は付かんだろ? 向こうさんも色んなご令嬢から婚約の打診が来て鬱陶しいらしいし、丁度いいんじゃね?」

「……そうですよ、婚約破棄なんてしたらレーチェに傷が付くじゃないですか。」

 すっかり失念していたが、婚約破棄した貴族女性の末路は酷い。少なくとも、同等以上の家格との婚姻は望めない。良くて男爵や子爵の後妻か公式愛人だろう。それが嫌なら、実家に寄生するしかない。

「良いんだよ、国外に嫁ぐならその位の瑕疵があった方が、陛下だの殿下だのを納得させやすい。」

「は? 国外?」

「…………俺なにか言った?」

 目線を逸らすロドリゲスに、レオニールは眉を吊り上げた。

「国外とはどういう事です!? レーチェを他国に嫁がせるおつもりですか!?」

「うるせぇなぁ。相手が望んでくれて、レーチェが是と言った場合の話だ。」

「その相手とは誰です!? いいえ、父上がそうとまで思える相手が居るのに、何故今回その方に直接婚約を求めないのです!?」

「あの方にこちらから求めるだなんて無恥な真似、いくら面の皮の厚い俺でも無理。憤死する。」

「だから、あの方とは一体……」

 ロドリゲスはヒラヒラと手を振って、取り合おうとはしてくれない。こうなってはもうどうしようもない。彼は何があろうと口を割らない。

「婚約には通常の文言の他に、二つ制約を付ける。一つ、レイチェルかアーノルドに愛する人が出来た場合、速やかにこの婚約を破棄する。二つ、あの方がレイチェルを妻にと望んだ場合、速やかにこの婚約を破棄する。この場合、レイチェルの回答の是否には関係なく破棄される。」

「……はぁ。レーチェにはどうお伝えに?」

「『ごめーん、なんか婚約する事になっちゃった』でいけるだろ。あの王弟殿下に求婚されたなんてトラウマにしかならんだろうし、一々教える事ないない。」

「ごめーん、て。何故父上がレーチェの前では、チャランポランの自由人を気取っているのか理解出来ないのですが。」

「だって俺が真面目な顔すると、盛大に怯えるんだもんよ。」

 まぁそのご面相じゃなと思いつつも口には出さず、レオニールは一礼すると執務室を出た。

という訳で、二人の婚約はまさかのグランフィルス側ではなくラドルフ側の都合でした。

つまり巻き込まれた被害者はアーノルド……なのにあの扱い……スマヌ……スマヌ……。

レーチェがロドリゲスの真面目顔に怯えるのは、勿論ゲームのレイチェル的バッドエンドが頭を過るからですよ。

折角読んで頂いたので、すぐにバレる謎も置いていきますね つアノカタッテダレヨ

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