表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/23

土使い

もう少し更新速度を上げたいと思っているのに何故こうなのか……。

 もちろん五十対一といったって、一度に掛かれる人数なんてたかが知れている。多くて四人が限度だろう。

 つまりは単純な持久戦という事になるのだけれど、五十人も居れば一巡する頃には最初の人間が復活している訳で、どれだけの実力差があろうと一人で捌き切れるものではない。

 それを圧勝て。こ、殺してないよね……?

「圧勝っつーか瞬殺って言った方が良いかもな。」

 瞬殺って殺すって字が付いているんだけれども……こ、殺してないよね?

「でもこれだけだと単なる新米騎士共の恥だろ? で、奴等が自分の恥を吹聴して回る訳もなし、こんな話が大々的に……いやあくまで騎士や見習いの中での話だがな、それでも広まる訳がねぇ。にも関わらず、なんで騎士なら誰でも知ってるような話になってるかってーと……。」

 そこでたっぷりと、勿体振って、切る。

「奴等の地獄が、こっからだったからだ。」

 地獄て。

「オルバー前男爵は優秀な使役師でもあるんだよ。」

 ゴンゴルが、ニヤリと笑う。

 うんと、ここらで使役師の説明でもしとこうかな。

 我が聖グランフィルス剣術魔法学校にも使役科が存在するが、では使役とはなんじゃらほいという話である。

 とはいえ言葉の通り、と言って相違ない。

 そのまんま、魔獣だの妖獣だのを使役する御技である。

 あ、魔獣と妖獣の差としては、例えば火で攻撃されたとして水魔法で消したり風魔法で吹き消したりするのが魔獣で、魔力による肉体強化で生身で耐えきるのが妖獣ね。

 魔力を外に向けて使えるのが魔獣、内的にしか使えないのが妖獣だ。

 妖獣に漂う何とも言えない脳筋感が……いや、決して親近感を抱いているなんてことはない。ええ勿論ですとも。

 まぁそれは置いておいて、使役科に在籍する攻略対象者は魔力特性が闇のトリニウス=シュナイゼス。先日の懇親会で把握した!

 で、闇魔法の特性、覚えておいでだろうか?

 そう、地水火風の精霊魔法みたいな属性とは異なり、体に作用する光魔法と対をなす精神干渉の魔法である。

 精神干渉……うん、なんかちょっとアレな響きだよねぇ。

 一応人間相手の使用は国法で禁じられてはいるけれど、やはり近寄り難く感じるのが人情だ。

 そんな彼の孤独を癒やすのが主人公ちゃん……なのかな?

 トリニウスの爵位が男爵と低いのも相俟って、純愛エンドだと妹が騒いでいたのを覚えている。

 確か妹のイチ押しキャラが彼だったのではなかろうか。煌びやかな他キャラとのエンドとは異なり、沢山の魔獣や妖獣に囲まれてのほのぼのエンドイラストを見た気がする。

 とまぁ、そんな事は今はよろしい。

 さて、ついでに闇使いが光使いと同等に稀少であると説明したのも覚えておいでだろうか?

 魔獣や妖獣を支配し使役する、如何にも闇使いの専売特許のような御技。

 しかし使役科は毎年、四十人クラスを守っている。

 では使役科に在籍する、彼以外の生徒の魔力特性は何か。

 答えはその大半が、土使いなのだ。少し意外な気がしない?

 何だって土使いが使役士に向いているのかというと、それは魔獣や妖獣がパンダやコアラのレベルで偏食だからである。

 基本的に、一種類しか食べないのだ。

 例えば……魔獣の代表格、前世の日本でも有名どころのグリフォンの場合、ギルギスロッジという植物しか食べない。

 そう、奴等あんな如何にも肉食ですみたいな顔して、実は草食なんだぜぃ。

 ギルギスロッジ、人間は口に入れるどころか手で触れることすら躊躇する、硬いギザギザの付いた葉っぱだ。

 この葉っぱがまぁ生えない。この国でも、東の孤島の極々一部でしか自生していない筈である。

 そんな食糧事情で、グリフォンは数を増やせない。グリフォン以外も、同様の理由で中々繁殖できないのだ。

 しかしそんな窮状を打破するのが土使いである。彼らは厳しい条件下でしか自生しない植物を、人工的に栽培することが出来るのだ。

 これは強い。

 魔獣や妖獣と言ったって、考えているのは普通の動物と変わらずゴハンと種の繁栄だ。

 稀少な食料を安定的に供給できるというのは、圧倒的なアドバンテージであり最強のカードである。

 しかも男爵は御料牧場の長、広大な面積の土地持ちだ。コロニーさえ提供できるのではないだろうか?

「オルバー前男爵が契約するのは、三十余頭のグリフォンだ。」

「ブッ!」

 リアルに噴き出した。

 グリフォン? 私が例え話に出すくらいに有名なグリフォン? を、三十頭?

 何だその破格の数は。この国に生息する大半を占めるのではなかろうか。

 大体にしてグリフォンなんて、一頭と契約出来れば平民でも行空騎士に大抜擢である。

「そのグリフォン達に、毛糸玉の様に蹴り転がして遊ばれたらしくてな。」

 あらやだ可愛い。グリフォンが猫が毛糸玉にじゃれつくように前脚でツンツンするとか、凄く可愛いじゃないか。図体がデカいからこそ可愛い。転がされるのが人間というのが如何ともだが。

「蹴ッ転がされて遊ばれて、挙げ句の果てには全体責任で、騎士団全体が一週間肉なし生活だ。其奴らの味わった地獄は想像つくだろう?」

 肉なし。騎士の食生活に肉なし。先輩騎士からの折檻は、それはそれは厳しいものだっただろう。

「そんな訳で一気に話が広がって、騎士や騎士見習いにとって、オルバー家は不可侵の有名人になったって訳だ。」

 そりゃ有名にもなるだろう。絶対に手出しは出来ない。

「そんな奴等が、騒いでる。」

 ふと、ゴンゴルの表情が改まる。

「オレアノの登場に、『あれは誰だ』とな。」

 騎士達はオルバー家の動向に注目して、その内実にも詳しいのだという。

「オルバー前男爵には二男二女、オレアノの名乗った三男なんぞ存在しない。」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ