懇親⑤
ダラダラ喋っております。
オレアノにもロレンを紹介しないと! というフランツの呑気な言葉により、私達は照明の落ちた薄暗い中をゾロゾロと移動する。
く、暗い! 主人公ちゃんはまだ踊っているのか!
でもみんな生徒会二人のダンスに夢中なようで、軽食の用意されたテーブルの近くは比較的空いていて快適だ。
さてオレアノは何処かね〜? お、居た居た。
「え……、何どういう状況?」
添え物の葉っぱをモシャモシャと咀嚼していたオレアノが、私達に混じったフワ金の姿を認めて眉を顰める。
どういう状況かは、ゴメン私にも分からない。
「なんかコイツ、フランの弟らしいんだわ。」
立てた親指で指し示し、ゴンゴルがざっくりとした説明をする。
「え? っと? 生徒会の人だよね?」
「フランツの双子の弟でロレンツって言います。よろしく。」
ニッコリ挨拶するフワ金。
……しかし双子……双子かぁ。言われてみると、確かに髪と瞳の色は同じだなぁ。でも逆を言えば、それしか似ている所がないよ。
「オレアノです、よろしく。」
「……で、ロレンが用のあるのは姫にかな?」
二人の挨拶が終わったところで、フランツがフワ金に声を掛ける。
え? 私?
「それと、彼にも。」
きょとんとする私を見たあとに、フワ金の若草色の瞳が向けられたのはアルカロス。
「これは忠告、マリアヴェルには関わらない方がいい。」
……別に関わりたくて関わった訳じゃないんだよ。
「なに? 何かあった?」
フワ金の言葉に、オレアノが私を見る。
ああ、そっか。主人公ちゃんからの襲撃を受けた時には、既にオレアノ居なかったからね。
「それが――――。」
掻い摘んだ説明を聞いて、オレアノが思案する。
「それで……、何で、何を、貴方は忠告したいんだろう?」
照明の落ちた中では存外剣呑な色を含む琥珀の瞳で、オレアノはフワ金を見遣る。
「それは……そうだなぁ、最初っから説明した方がいいのかな。長くなるけど。」
「どうせ暇だしドンと来い。」
フワ金の言葉を、ゴンゴルが受ける。
「じゃあ……、まず僕は占術科なんだ。占術師になる人間は、生まれた時から決まっているのは知ってるよね? つまり他の学科と違って、僕等は学院に入学する前から既に占術師だという事になる。そんな訳で、僕には入学前から、ある程度の学院での生活が視えてた。」
「未来視か。凄いな。」
アルカロスの声に、そうか凄いのかとうんうん頷く。……いや、占いとかあんまり興味なくてですね。
「それがあんまり凄くない。学院に入ってから今日まで、僕が視た未来とはてんで違う事ばかりが起きている。」
ハアと息を吐いて続ける。
「まぁそれは置いといて、僕の視た未来を話すね。生徒会のメンバーは六人、現実と変わらない。でも全体的に皆ギスギスしていて、男メンバー全員が心に傷を持ってる感じ? 俺は誰も信用しない! みたいな。それをマリアが一生懸命に頑張ることで頑なな心を解して、そして皆がマリアを好きになって……みたいなゴメンちょっと僕なに言ってるんだろ恥ずかしい。」
それ何処の乙女ゲームですかってここのですね。……うん、多分だけどフワ金が視た未来っていうのは、この乙女ゲームで王道ルートを通って、更にハーレムエンドになった場合のシナリオではないだろうか。
「でもそんな未来を視て、まず僕はオカシイって思った。」
「なんで? ロレンって、未来視を外したことないよね?」
フワ金の言葉に、フランツが疑問符を浮かべる。
「いやだって、僕に心の傷とかないし。そりゃ未来を視ることで、しんどい時もあるけどさ。」
フワ金……いや、ロレンツと改めさせて貰おう。彼は強い人なんだな。
「それに何より、僕がマリアを好きになって、なんかハーレムみたいなのの一員になるとか有り得ないし。」
「有り得ないのか。好みじゃねぇとか?」
ゴンゴルの問いに、ロレンツは頭を振った。
「そんなフワッとした理由じゃないよ。――僕は既婚者だ。」