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懇親③

レイチェルって、あんまりアーノルドの声とか把握してないのですよ。

「一曲目は私と踊る約束だっただろう!?」

 そう言って柳眉を吊り上げるのは、銀髪の美人さん。美人ってのは男にだって使える言葉だからね。

 いやそんな事よりも、公爵子息殿じゃないの? って言うか兄さん誰だい?

「セイウェンくん……。」

 主人公ちゃんがほんの少し気不味そうな声で、言葉尻を濁す。

「ハハッ、セイウェン振られてやんの。」

 不機嫌そのものの美人さんに物怖じすることなく声を掛けたのは、跳ね回るオレンジの髪の……駄眼鏡ではないか。今日も今日とて眼鏡は頭の上に鎮座在している。眼鏡に仕事させてやりなよ、視力矯正という仕事を。

 というか駄眼鏡が居るという事は、この銀髪も生徒会メンバーか。そう言えばカラフルモビー達の中に居たかも知れない。でも何か、入学式の時と雰囲気変わってないかい? もう少し硬質なイメージだったと思うんだけどな。

「黙れキース。折角目障りなアーノルドが消えたというのに、お前まで邪魔するつもりか。」

「まっさかぁ。ようやく公爵様のお零れに与れる侯爵様の邪魔をするほど、俺は立場を弁えなくないですよぉ。」

「何処までも癪に障る……ッ!」

「まぁまぁ、二人共! 今日はオウサマを気にせずマリアと遊べる貴重な日なんだから、仲良くしようよ!」

 険悪な二人の間に割って入ったのは、フワフワ金髪の可愛らしい男の子。でもやはり何処か小悪魔っぽい微笑を浮かべていて、本気で仲裁をするつもりはないっぽい。

「またオウサマなんて言って、アーノルドに激怒されますよ?」

 後ろから追い付いた黒髪の少年が気怠気な声で言って、小悪魔くんを諌める。

 アーノルドの渾名はオウサマか。私の姫とどっこいどっこいだな。

 えーと、攻略対象者揃い踏み? アーノルドは居ない訳だけれども。

「何だ? 公爵令息様は一緒じゃねぇの?」

 ゴンゴルが気安く声を掛ける。流石だな!

「会長は学院長に付いてホスト役。パーティが始まったら遊べないから、俺等はマリアのエスコート役を譲ったわけ。」

 駄眼鏡が気の無い声で応える。意外に律儀だな。

 でもそうか、やはり学院長の玄孫ともなると色々ある様である。

「で、ダンスの一番手には其処の護法科首席が名乗りを上げてたって訳か。それをうっちゃって、女の側から他の男に申し込みとはやるねぇ。」

 ゴンゴルが意地の悪い顔で失笑する。

「その、だってセイウェンくんは他の女の子達に囲まれて、忙しそうだったし!」

「ああマリア! 謙虚は君の美徳だが、他の女なんて気にしないでくれ! 私の心は唯一人君のものだ!」

 あー……、うん? えっとさ? このゲームって、卒業までの三年間で攻略する仕様だよね?

 早くもメロメロやないかーい! まだ始まって二週間足らずやで!?

 いや、っていうかさ、私はてっきり主人公ちゃんはアーノルドルートだと思っていた訳さ。だって何時も横並びだったしさ、それだって展開早いなと感心していた訳だよ。

 全員? もしや全員なの? 全員好感度スタートダッシュなの? おいおい途中で息切れしちゃうぜ!?

 というか私はアーノルドルート以外を想定していなかった! あらヤダうっかり! 八兵衛もびっくり!

 とかって動揺している場合でもない。

 え? なに? その場合どうなる訳? 主人公ちゃんがアーノルド以外とくっついた場合……、え? 私、公爵夫人? 普通に公爵夫人? それじゃ陸操士になれないじゃないか!!

 ワタクシ不肖レイチェル=ラドルフ、全力でアーノルドルートを推させて頂きます!!

「あの、マリア嬢?」

 『ヴェ』は上手く発音できないので、華麗に回避だ。

「は、はい、侯爵様!」

 あせあせと周りのカラフリー達に助けを求める視線を投げながら、焦った様子で返事をしてくれる。

 いや、慌て過ぎだろう。別に取って食いやしないよ。それと侯爵様なのは私の父であって、私ではないからね。

「アーノルド様のお側に行ってはいかが? 貴女が隣に居れば、きっと心強いと思うわ?」

 何としても君には、アーノルドを攻略して貰わねば困るのだよ。さっさと好感度上げに行ってくれ!

「ふ〜ん? 侯爵令嬢様はぁ、何を企んでいるのかなぁ?」

 フワフワ金髪、略してフワ金が細っこい人差し指を顎に当て、こてんと小首を傾げて上目遣いに私を伺う。

 たたた企んでるとか! 失敬な!

「だってオウサマの婚約者がそんなこと言うなんて、おかしいじゃない。」

「私とアーノルド様との婚約はあくまで家が決めたもので、当人同士が納得するものではありませんの。」

 だから! さあ! 遠慮せずに主人公ちゃん!

「やっぱり怪しい! 騙されちゃダメだよマリア!」

 何がやっぱりか! この小童が! 同い年だけれども!

「別におかしくも怪しくもねぇだろ。変な奴は纏まっておけってだけで。」

 なあ? とゴンゴルに同意を求められたフランツは、曖昧に笑うしかない。

「なんだと貴様!?」

 ああ、銀髪の逆鱗に触れてしまった様だ。彼はアーノルドを嫌っているみたいなので、主人公ちゃんの為に怒っているんだね。愛だね。

「だってアンタ、確か侯爵家だよな? そんな相手との約束を反故にして子爵位にダンス申し込むとか、変以外の何物でもないだろ。」

 まぁ、そうだね。というか、銀髪は侯爵なのか。親の方は見れば分かるとは思うんだけど、流石に子供だけでは家名を言って貰わないと爵位が知れない。……子爵位以下だと聞いても分からないかもだけど。

「それは……、マリアが私を気遣っただけだ!」

「だからって何でアルカロス? 面識ねぇだろ?」

 後の質問はアルカロスへ。紅い頭が戸惑いながらも頷く。

「普通はお宅等に行くんじゃないの? 伯爵、子爵、男爵?」

 ゴンゴルが向けた視線の順にいくと、駄眼鏡が伯爵、フワ金が子爵、黒髪が男爵の様だ。というか全員把握しているのか、凄いなゴンゴル。

「それとも、ウチの姫に対抗心燃やしたとか?」

 は? 対抗心? 何故?

「ち、違います! 侯爵様をエスコートしているのを見て、素敵だなって!」

「えー、マリア! 僕の方がもっと素敵にエスコートしちゃえるよ?」

 フワ金が甘える様に、主人公ちゃんの腕に手を絡ませる。

「うーん、みんな女の子に囲まれてて、私なんかじゃ近付けなかったから……。」

 言って悲しげに顔を伏せる主人公ちゃん。

 女の子の層への突撃は無理でも、コント層を形成していた私達の元へ突撃かましてきた事を思えば儚げとは無縁だと思うんだけれども……、その立ち姿は可憐だ。

「マリー! ごめんね、寂しい思いさせて!」

 フワ金が主人公ちゃんにギュッと抱き着くと、銀髪に駄眼鏡、黒髪が慌てた。

「こら! どさくさに紛れて何をしている!?」

「マリア! 俺が慰めて上げるから一緒に踊ろう?」

「それより俺と、あちらで休憩しませんか? 気を遣って疲れたでしょう?」

 一斉にわっと群がるカラフルメンバー。なんだ、コイツ等もコント集団だったのか。道理で主人公ちゃんにコント突撃耐性がある筈である。

 ……というか、そろそろこの状況に飽きて来たのだが、どうすれば良いのだろうか?

 いつも強制終了させてくれるオレアノは、残念ながら今ここには居ない。

 カムバアァアアアック!!!

登場キャラが増えると、黙っちゃうキャラが出てくるのが困りどころです……ぬぬぬ。

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