006話 信じてください、ご先祖様
「留美さん。生憎俺にはそんな摩訶不思議な事を理解する余裕はないんだ。」
「むぅ…。留美やあいつの魔法を見ておきながら、ご先祖様はまだ信じてくれないのですか?」
半分涙目になっている。…俺は正論を言っているはずなのだが、なぜか俺が苛めた構図が出来上がりつつあるのは気のせいだろうか。
「遊里、ねぇ、少しは信じてもいいんじゃない?たとえば納得できる証拠を見せてもらうとか。…留美さん。あなたが未来から来てて、そして魔法が使えるなら、なにか証拠はないの?」
すると、転校生の留美はニヤッと笑った。一度だけあった。俺の妹、留美もこの表情を見せたことがある。なにか彼女にとって都合がよく、かつ俺にとって都合の悪いような悪知恵が働いたときだ。
「ご先祖様たちは、留美が魔法を使うところを見せれば信じてくれるのですね?」
飯を食べるときに使うダイニングテーブル、それを動かしてリビングにスペースを作った。
「これから留美の契約竜であるピーちゃんを召還します。時代は過去へ遡ってますが、竜界と人間界の時間の流れが違うので大丈夫でしょう。」
留美が、空けたスペースの真ん中に立ち、腕まくりをした。二の腕までたくし上げると、そこには竜を模したエンブレムと幾何学模様がタトゥーのように描かれていた。あの幾何学模様、どこか重力を連想させる気がする。
「では、いきます。」
留美を中心として、突如、光の線が現れた。それぞれが結ばれ、魔方陣らしきものを形成する。陣が完成したのだろう、さらに強く光り、俺の視界を奪った。そして、また目が見えるようになると、そこにはかつて見たことのない生き物がいた。
「ご先祖様、この子が私の契約竜、ピーちゃんです。ピーちゃん、彼が魔術師の始祖である日比野遊里様よ。ご挨拶して。」