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003話 ご先祖様大ピンチ

「ご先祖様って呼ばれた…?」

 昼休みの話だ。俺は凛と屋上で話していた。転校生の容姿、名前の不気味なまでの一致については、あえて触れていない。お互い他人の空似として片付けた。だが、彼女が着席するときに俺に放った一言が脳裏に焼きついて離れない。それでいて、その謎の囁き以後、転校生は俺に話しかけることはなかった。さらに、休み時間のたびに彼女はクラスメートたちからの質問攻めに会う始末で、こちらからコンタクトをとる事はかなわなかったのだ。


「彼女に直接聞いてみる必要はあるかもね。…よし、結論が出たところでお昼にしますかっ!」

 手提げの紙袋から出した大きな弁当箱。凜は授業日は毎日二人分作ってきてくれる。俺は学食ですませるつもりでいるのだが、いつの間にか彼女の作る弁当に頼りきってしまった。


 その日の放課後始まってすぐだ。俺は意を決して転校生に話しかけようと試みた。しかし、後ろを向くとすでに姿が見えない。どうやら女子で仲良しグループを結成して、さっさと帰ってしまったのだろう。謎は残るが、俺には墓参りがある。凛も行くといっていた。女子を遅くまで連れ回すのはよくないだろう。早めに終わらせよう。

 途中の花屋で墓前に供える花を買い、共同墓地へとやってきた。平日の夕方のため人影はなく、まだ日が短いこの時期だ。だんだんと薄暗くなっていく。何回か通った道をとおり、目的の墓の前へたどり着いた。花を供え、合掌。目を閉じていると、昔が思い出されて涙が浮かびそうになる。だが、泣いてしまえば、今あるこの現実さえ壊れてしまいそうな気がして、涙はかみ殺した。長居はできない、したくない。凛を連れ立って墓地の出口へと向かった。

「そういえば、凛。朝言ってた言いたい事って何だ?」

「え、あ、ぅん。こんなタイミングで言うのもおかしいかもだけど、私優柔不断だから今言っちゃう。ぁのね、私…。」


「失礼、そこのお二人さん。」

 いつからいたのだろう。墓地の入り口の門に背を預け、誰かが立っていた。声から判断して女。そして、その女は明るい街頭の下へと出てきた。

「お取り込み中ごめんなさい?でもこっちとしては一方的に用があるの。日比野遊里、あなたにね。」

 心当たりのない人物だった。年は同じくらい。だが、その眼光には背筋を凍らされるものがあった。獲物を狙うような鋭い目。敵対心を隠さない様子でこちらを見据えている。


「俺に何か?」

「えぇ。迷惑ですが、日比野遊里には今ここで死んでもらわなくてはいけません。予定通りの時代ではありませんが、覚醒がまだならこちらのもの。」

 俺には彼女が言っている事の大半が理解できなかった。しかし、目の前の人物が俺の死を望んでいるのは容易に理解した。掲げた右手は赤色の光で纏われ、それがやがて円となり、魔方陣のらしき物を形成している。そこから瞬時に噴出したのは渦巻く炎だった。

「危ないっ」

 横にいる凛を押し倒す形で、俺達は地面に伏せる。頭上が真っ赤に染まり、後頭部が痛くなるほどの高熱が襲ってきた。すぐに熱が引くのを感じると、髪の毛は燃えていないのだろう。

「大丈夫か?…逃げるぞ。」

 凛を助け起こし、墓地の別な出入り口へと走り出した。


「逃げられませんよ。」

 裏門にたどり着き、敷地外へ出ようとした時、目の前が赤く染まった。燃える炎の壁が顔面を掠め、前髪を焦がす。俺の一歩後ろにいた凛は、どうやらセーフのようだ。

「潔く死んでください。」

 女の手には刀、ゆっくりと俺達との距離を縮めてくる。いつの間に、どこから取り出した?逃げようにも後ろには炎の壁だ。狭い空間のせいで脇に逃げることもままならない。どうなっている?まるで魔法みたいな現象が起こっている。これは現実なのか?

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