2/6
002話 はじめまして、ご先祖様
「ホームルームを始める前に、今日は転校生を紹介する。」
担任が教壇で唐突にこんな事を言った。転校生か…、他人の家庭の事情に口を出す権利はないが、俺としてはこの日常をできる限り壊さないでほしいと切実に願う。
「日比野、入れ。」
俺は軽く驚いていたが、ドアを開けて入ってきた人物に度肝を抜かれた。いや、ある意味よかったのかもしれない。下手に落ち着いていたら、立ち上がって彼女の名前を叫んでいたかもしれないのだから。
「日比野留美です。これからよろしくお願いします。」
何もかもが同じだった。髪の毛の色も長さも、見た目の背丈から名前まで…、俺の死んだはずの妹、日比野留美と寸分違わなかったのだから。いや、同じじゃない、似ているだけだ。他人の空似。
「日比野はその空いてる席に座ってくれ。」
壇上の教師が指差すのは、俺の真後ろの席だった。みんなの注目が集まる中、日比野留美なる女子は歩みを進め、静かに指定された席へと落ち着いた。
「はじめまして、ご先祖様。」
謎の台詞を俺の耳に残しながら…。