001話 ご先祖様のプロフィール
二次創作が禁止になりましたので、ちょっと以前から温めていた小説のネタを文章にしてみました。もとより物書きの才能がないのは許してください。短い話を毎日更新目指してがんばります。(長いとたぶん無理なので…。)
「お帰りなさいませ、ご先祖様♪」
俺が壊さないように大事にしていた現実は、この時点で既に修復不可能なまでに崩壊していた。
普通の日常を好む俺にとって、中堅の進学校であるこの高校は心安らぐ場所だ。普通の友達、普通の先生、普通の教室。成績順位も中盤で、担任教師にはよく成績上げろと言われるが、このポジションの心地よさが俺にとって捨てがたい。
「おはよ、遊里。」
「あぁ、おはよ~。」
長谷川凛という女子も、これまた普通な幼馴染という位置に収まる存在。本当に普通の日常って最高だ。
「またしんみりとした顔して。何考えてるのよ?」
「いや、ただこの普遍極まりない生活に感謝の意を示してるだけ。」
「そう、いつもの遊里でよかった。私てっきり…、うぅん、何でもない。」
俺の表情が変わったのが見えたのだろう。急に話題を変えた凛。いいや、そうだとも。俺の頭では一年前の今日のことを考えていた。忘れるはずもない。俺が普通をほしがるきっかけになった出来事を、俺は未来永劫忘れたりしない。
「凛、墓参り、ついて来てくれるか?今日が一周忌だから、留美と仲良かったお前とは墓参り行っておこうと思ってな。」
一年前、突然に俺の家族は死んだ。詳しいことは思い出したくない。俺を含めて家族四人は交通事故に遭い、俺以外が死んだ。それだけ覚えてれば十分だ。その日までのかつての俺も、非現実的な事を求めた事もある。だが、家族が死ぬという誰も予想できなかった事実が現実となって、俺は普通じゃない事が恐ろしくなった。無理矢理病名をつけるならば、「非現実恐怖症」。俺は家族の死後、今残っている現実を1ミリとして変えたくないと思った。そうか、もう1年も経つのか…。
「うん。行く。後ね、私も遊里に言いたい事があるの。だから、変かもだけど、お墓参り終わったら言わせてね。」
「この日常が壊れない程度で頼む。」
俺の話を聞いていたのだろうか、凛はそそくさと自分の席へと戻っていった。