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初めてのデート③ 瞬視点
苦手だ。
「佐藤くーん!」
「ああ!佐藤くんに触ったー!」
昔からずっと
「おはよう!」
「ずるい!私もあいさつする!」
どこへ行っても、ひとけのない場所へ行ったとしても
「「「佐藤くーん!!」」」
心休まる場所なんてなくて、
そのたびに"自分"を奥へ押しやった。
(はぁぁ)
ジジジ……ノイズのような耳鳴りにも似た音が消えない。
「佐藤くん」
そう呼ばれるたびにノイズがして気分が悪かった。
「佐藤くん」
でも
「? 佐藤くん?」
ノイズがしなかった。沙織さんだけは。
………
……
…
思えばあのときから惹かれてたような気がする。
「よしよし」
沙織さんには「自分」を見られても嫌な気がしない。むしろもっと知ってほしいと思う。だけど
「お店のことは気にしてないからね。
今度また一緒に食べに行こうねえ」
この母親にあやされてるみたいな今の状況は……
「よしよし」
僕は沙織さんに撫でられながら伸びたカップ麺をすすった。
(伸びてる)




