表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/22

2人の始まり① 沙織視点

ホワイトクリスマスとはよくいったものだ。


「私の仕事なのに……すみません」


雪が舞いおちるクリスマスに私は


「全然。大丈夫だよ」


新人が溜めてる期日の迫った仕事を


"教育係のお前がなんとかしろ!"


上司からの命令で代わりに片付けていた。


「ごめんなさい」


仕事の覚えは悪いが、真面目な子で自分を責めやすい。だから私は


「気にしないで」


って言った。


「本当にすみません」


仕事を溜めてしまったのは

私のサポートが至らなかったから。


「いいから。私に任せて」


それにまだ働き始めて8ヶ月だ。

1年も経っていない。

これから覚えていけばいい。


「先輩……ありがとうございます!

それじゃこのあと予定があるので帰ります」


そう。まだまだこれからだ。


「おつかれさま」


「お疲れ様でした」


そういうと後輩はさっそうと荷物をまとめて

オフィスを出て行った。


「ちっ、もっと早く仕事変わるって言えよ」


というひっそり声を残して。


(……気にしない。うん。気にならない)


腹の底から込み上げてくるものがあったけど

気にしても仕方ない。


「早くやってしまおう」


たまに小刻みに消える蛍光灯の下、

私は1人パソコンを打ち込んだ。


"本当に便利だわ"


入社してから12年、


"困ったら頼れば全部やってくれるからマジ便利"


学生時代の二の舞にはなるまいとやってきたつもりだったけど、結局は「便利屋」というあだ名が裏でつけられてしまった。


"ありがとう"


みんな表面ではそういうけど、裏では


"マジで便利だわ"


便利、便利と私のことを言うだけ。


"しかも自分がやったとか言わないから

私たちの評価だけが上がるよね"


やればやるほど仕事がどんどん回ってきた。

負の連鎖。もう本音を言えば断りたかった。

でも、


"あいつじゃ遅いからお前がやれ"


上司に言われてしまってはやるしかなかった。


(はぁぁぁ)


言葉にできない感情が胸の中に溜まって

のどが詰まったように苦しかった。


「……なにやってんだろ」


うっすらと画面にうつった自分の顔は

細く吊り上がった目で睨みつけるように

画面をのぞいていた。


「はぁぁ」


なんのために仕事をしているのか。


(本当は私だって)


画面をぼんやりと眺めたまま、

自分の殻に閉じこもってしまいそうだった時


「……沙織さん?」


蛍光灯の灯が照らす光と夜の闇のちょうど境に


「佐藤くん?」


何かの資料を抱えた佐藤くんが立っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ