2人の始まり① 沙織視点
ホワイトクリスマスとはよくいったものだ。
「私の仕事なのに……すみません」
雪が舞いおちるクリスマスに私は
「全然。大丈夫だよ」
新人が溜めてる期日の迫った仕事を
"教育係のお前がなんとかしろ!"
上司からの命令で代わりに片付けていた。
「ごめんなさい」
仕事の覚えは悪いが、真面目な子で自分を責めやすい。だから私は
「気にしないで」
って言った。
「本当にすみません」
仕事を溜めてしまったのは
私のサポートが至らなかったから。
「いいから。私に任せて」
それにまだ働き始めて8ヶ月だ。
1年も経っていない。
これから覚えていけばいい。
「先輩……ありがとうございます!
それじゃこのあと予定があるので帰ります」
そう。まだまだこれからだ。
「おつかれさま」
「お疲れ様でした」
そういうと後輩はさっそうと荷物をまとめて
オフィスを出て行った。
「ちっ、もっと早く仕事変わるって言えよ」
というひっそり声を残して。
(……気にしない。うん。気にならない)
腹の底から込み上げてくるものがあったけど
気にしても仕方ない。
「早くやってしまおう」
たまに小刻みに消える蛍光灯の下、
私は1人パソコンを打ち込んだ。
"本当に便利だわ"
入社してから12年、
"困ったら頼れば全部やってくれるからマジ便利"
学生時代の二の舞にはなるまいとやってきたつもりだったけど、結局は「便利屋」というあだ名が裏でつけられてしまった。
"ありがとう"
みんな表面ではそういうけど、裏では
"マジで便利だわ"
便利、便利と私のことを言うだけ。
"しかも自分がやったとか言わないから
私たちの評価だけが上がるよね"
やればやるほど仕事がどんどん回ってきた。
負の連鎖。もう本音を言えば断りたかった。
でも、
"あいつじゃ遅いからお前がやれ"
上司に言われてしまってはやるしかなかった。
(はぁぁぁ)
言葉にできない感情が胸の中に溜まって
のどが詰まったように苦しかった。
「……なにやってんだろ」
うっすらと画面にうつった自分の顔は
細く吊り上がった目で睨みつけるように
画面をのぞいていた。
「はぁぁ」
なんのために仕事をしているのか。
(本当は私だって)
画面をぼんやりと眺めたまま、
自分の殻に閉じこもってしまいそうだった時
「……沙織さん?」
蛍光灯の灯が照らす光と夜の闇のちょうど境に
「佐藤くん?」
何かの資料を抱えた佐藤くんが立っていた。




