オルゴールが鳴ったら俺の出番!~俺が幼馴染のヒーローになるまで~
楽しくお読みいただけましたら幸いです。
俺の幼馴染は、自分の気持ちを人に伝えることが苦手だ。
俺には何でも言えるのに、友達やクラスメイト、先生にも言えない。
そんな彼女の心は、少しずつ弱っていった。
言いたいのに言えない自分を責めていた。
俺にまで気持ちを伝えることを拒みだした。
このままでは彼女はどんどん弱り壊れてしまう。
だけら俺は対策を練った。
それが、掌サイズのキーホルダーにもなる、猫の顔の形をしたオルゴールだった。
「これは、普通のオルゴールじゃないんだ」
俺は彼女に言ってシルバーのネジを巻く。
手を離しても音は流れない。
ネジはゆっくりと回っているのに音が流れない。
彼女はオルゴールに耳を当てたりしているが、何も聴こえないようで驚いている。
「これが、このオルゴールの特徴なんだ」
そう俺は言って、もう一つ同じようなオルゴールを右手の掌の上に乗せ、彼女に見せる。
「この二つのオルゴールを近付けると、俺の右手にあるオルゴールが鳴るんだ」
彼女は音が流れだしたオルゴールを手に取り、耳に当てて聴き入っている。
「そのオルゴールにはネジがないんだ」
彼女は俺の言葉を聞いて、裏表とオルゴールを見ている。
「このオルゴールは二つで一つ。一度近付ければ、離れていても片方のネジを回せば、オルゴールが鳴るんだ」
彼女は驚きながら俺を見た。
だから俺は彼女に伝える。
「君が苦しくなったら、オルゴールのネジを巻いてよ。そうすれば俺のオルゴールが鳴って、君の元へ俺が行くから」
俺が彼女の目を見つめながら言うと、彼女が嬉しそうに笑った。
その直後、音が止まった。
ネジも止まっている。
沈黙が流れるのに、気まずい感じも、嫌な気分にもならない。
ただ彼女が安心した顔で俺の隣にいる。
それだけで良かった。
少しずつ彼女の心を軽くしてあげたい。
彼女が、自分の気持ちを伝えることができるようになればいい。
◇
「えっ、何でこんな時に?」
彼女がオルゴールを鳴らした。
俺は急いで彼女がいる隣の部屋へ向かう。
「どうしたの?」
俺はそう言って彼女を見て、言葉を失った。
だって彼女が美しすぎるからだ。
凄く美しい彼女は不安そうに俺を見ている。
今にも泣き出しそうな彼女に近付き、頭を撫でた。
「オルゴールは、今日が最後だよ」
彼女は不安そうに俺を見上げる。
「だってこれからは、ずっと君の隣にいるからね」
「ありがとう。大好きだよ」
彼女はウェディングドレス姿で、幸せそうに笑った。
俺はこの顔を隣でずっと見ていたい。
好きだから。
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