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俺に癒しを!  作者: 蓮生
1/2

俺に癒しを!#1

とあることをきっかけに人生が悲惨という言葉では

測れないほどに不幸となった男、山田 勇気。

しかし彼はそれまでの不幸を物ともしない大いなる

運命に巻き込まれることとなる。

さあ、目覚めなさい…ここからがあなたの人生なのですから……!


俺の名前は 山田 勇気。17歳。

俺の人生は大変冴えない。何ひとつついていないのだ。

いや、言い方が悪かった。ついているついていないでは測れないほどに不幸だ。それでも…

…思えばこのついてなさの発端は母の死からかもしれない。それまでは幸せだったと思う。


4年前、母は突然死んだ。

俺の両親は俺でもわかるくらい地域でも有名な仲良し夫婦だった。しかし、俺が小学校を卒業した頃に母は突然倒れ、医者にも原因がわからずそのまま死んでしまった。温厚だった父はそれからとても荒れてしまい、父自身もそんな自分が嫌になったのだろう。中学から帰ったある日、自室で首を吊っていた。

それからは本当に地獄だった。少し前まで

「頼りにしてね!」と笑顔で言っていた親戚の大人たちは、みんな酷い目でこちらを見た。

楽しい会話や出来事もたくさんあったのに……


俺の身の上話はここまでにしよう。ここまで話したことは俺の中では1番大きな「ついてない」。

いや、本当についていないんだよ。

高校には親戚がいやいや行かせてくれてる。

高校にも事情を話したらわかってくれて、ちょっとした援助もしてくれた。それはついていた。

しかし、その高校では毎日、小さなついてないが100回近く起きる。親戚にまた嫌な目で見られたくないから、大きな問題は一度も起こしたことはない。

それでも、異常だと思うぐらいに、ひどい。

ある日には不良にぶつかりタコ殴り。

ある日にはアイスを服に落とす。

母の死がどうでもいいぐらいに………!

「ついてねぇんだよぉーーーーーっ!」

思わず叫んだ。

「うるせーぞガキィ!」

学校帰りにいつもいるジジイからの怒声を浴びて、帰宅。これも日常さ。飯食って、茶碗落として、歯磨きして、顔に水浴びて、テレビ見ようとして、リモコンの電池がどっか行ってて、探してタンスに小指ぶつけて、見つけて、電池切れで、諦めて寝ようとしたら布団にカメムシついてて、なんとか追っ払ったと思ったら今度はムカデが入ってきて、こっちもなんとか追っ払って、やっと寝れた…………!

…久しぶりに、母さんの夢を見たんだ。

静かな秋の朝日が顔を照らした。

起床。何も起こらない!レアケース。

着替えた。何も起こらない!レアケース。

朝食。何も起こらない!これまたレアケース。

歯磨き。何も起こらない!レアケース。

外へ出た。何も起こらない!レアケース。

なんでだ。きっとこれは普通なのだ。なのに、、

涙が止まらない。うぅぅぅ。涙のせいで前がよく見えねえよお。ああ、神様。やっと俺のこれまでの苦労をわかってくれたのですね!

ビバ、人生!

「るんるんるん、おれはついてる男だーーッ!」

俺の頭の中には絢爛豪華な花が咲き、17歳の青春をめいいっぱい味わおうとしていた。

………そのときだ。

「ビーーーーーーーーーーーーーーーーッ」

突如鳴り響くクラクション。うるさいなと思ったが

ふと振り向くと、眼前にすでにトラックはいた。




「ぅう、がっ、うぅ」

俺はトラックに轢かれた。何だよ。何なんだよ。

神様とやら。やっと俺は普通になれたと思ったんだよ。なのに……なのに…

腕の感覚がない。溢れてくる涙は、痛みでもあり、何より悲しみと悔しさであった。

「こんな、こんなクソみてえな世界、滅びちまえばいいのにな…」

俺が最後に発した言葉は、世界への怒りだった。


どこからか、音が聞こえる。静かに、そして近づいてくるような。

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