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第四十九話 いつか……

 ヴァイスハイトが僕を訪ねてきてからそれなりの時が経ったと思う。


 僕はあの後、流されるまま、彼に着いていった。


 そして、魔族と僕は暮らした。


 なんとなく。


 することも、やりたいことも何も無いから、ただ適当に流れに身を任せた。


 その結果、僕はそれなりの地位と、金を手に入れた。でも、僕を満たすものは何もなかった。


 僕は、死ぬ方法をたくさん考えてたくさん試した。


 だけど死ねなかった。


 ずっと前に、父さんと母さんが寿命を全うしたって、報告が入ったとき、僕はそれを聞いて、悲しいとか、寂しいとか、そんな風に思えなかった。


 ただただ羨ましくて、「いいな」と、それだけを思った。


 そんな自分に嫌気が差した。


 そして僕は、今日も、魔族の彼らとくだらないことをして過ごしている。


「どうされましたか? ムエルト様」


 名前も知らない魔族が話しかけてきた。


 笑顔で僕を見ている。


 なんとなく、兄さんに似てるなって思った。


「なんでもないよ」


 風に吹かれて、桃色が舞った。


 僕の視界の先に桜の花が咲いている。


 綺麗だななんて思った。


 だから願った。


 いつか不老不死の呪いが解けて、いつか死ねる日が来ますように。


 僕は大嫌いな神にそう願った。




 ーーーーーーーー




 神界。


 神々が集う場所。


 そこに、楽しそうな話し声が響いていた。


「あんたのとこの転生者、まだ呪いが解けてないんだってな?」


「そうなんですよ! それより聴いてくださいよ! 最近、死ねる日が来ますように! とか罰当たりな願いが届いたんですよ! どう思いますか?!」


「それ、あんたんとこの転生者じゃねーの?」


「はははは! だったら面白いですね! 彼が一番嫌いな私に助けを乞うなんて」


「相変わらず楽しそうだな」


「でも、彼がそう思える日は来ないでしょうね」


「なぜそう言える?」


「一度壊れたものは、もう二度と元には戻れませんから」


「そうかな? 俺はそう思わないけどな」


「なぜです?」


「なんとなくだ」


「では賭けますか?」


「いいね!」

これでお終いです。

ここまで読んでくださった皆様、ありがとうございました。

ブクマや評価を励みに頑張れました。

ありがとうございました。


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