第一話 ムエルトの誕生
僕は死んだ。
死因は言いたくない。
それにしても、人は死ぬとこんな場所へ招待されるらしい。
全くもって迷惑な話だ。
「人間様、神界へようこそ! ということで、あなたになんとっ!! 神々からプレゼントがあります!! はい、パチパチパチパチ!」
初回から感じが悪いこの女神? 男神? 分からないけど、その自称神様が何やら楽しそうにはしゃいでいた。
そのテンションに僕はついていけなかった。
「まず一つ目の『ギフト』は、あなたを、異世界に転生させてあげます!!」
——ふーん。
「え?」
「異世界、行きたいでしょ?」
「全然」
「……どうしてですか?」
自称神様は、不思議そうに首を傾げている。
理由は山程あるが、言うのが面倒なので辞めた。
「嫌なものは嫌だから」
「しかし、残念ながら、あなたに断る権利はございません! ここは、喜ぶべき場面ですよ!!」
と言ってそいつは、ニヤリと憎たらしく微笑んだ。
「なんで僕が? 理由は? 僕じゃないといけない理由を教えてよ」
「秘密です」
「は?」
やっぱり、むかつく。
「それから、まだあるよ〜ん!!」
自称神は悪戯っ子みたいに笑って、
「あなたを不老不死にしてあげます!」
そう言った。
まったくふざけるのもいい加減にしてほしい。
不老不死? 異世界転生?
嫌に決まってる。
「お断りします」
「なぜですか?」
なぜ?
不老不死になりたい奴なんているんだろうか?
「それって一生死ねないって意味だよね。だからだよ」
僕が嫌悪感をあらわにしていると、自称神がわざとらしく肩を落とし、これまた、わざとらしく残念がった。
「おかしいですね。喜ぶと思ったんですけどね」
「喜ぶわけがないよね。とにかく、不老不死とか絶対嫌だし、転生させるとかも絶対やめてね」
「それって、フリですか?」
「フリに聞こえたのなら、その耳切り落とした方がいいかもね」
「……と、に、か、く!!」
自称神は、僕の肩を逃がさんとでも言うように鷲掴みにした。そして、無理やり視線を合わしてきた。僕は、こいつが嫌いかもしれない。いや、嫌いだ。とっくに嫌いだ。
きっと今の僕を鏡に映したら、まるで汚物でも見るような目をしているだろう。
そんな視線を、自称神に向けてあげた。
「そんなに、嫌わないで下さいよ! 傷つくなー!」
と、まったく心のこもっていないセリフを言ってから、
「他にもいろいろと、あなたの人生を面白くするような、『ギフト』を贈ってあげるのですよ? だから、次はきっと楽しいはずです!! それに、不老不死になれるなんて、有難いと思ってください! だから、少しは喜んでくださいよ! 面白くないじゃないですか!」
そして、自称神はウインクをして、投げキスをしてきた。
とことんふざけた奴だ。ぶち殺してやりたい。
そんな気持ちを抑え込み、僕は心の静寂を保った。
「だから、なんで僕なの? 僕は異世界なんて行かないし、不老不死にもなりたくないんだよ」
「あなたでないとダメな理由? ええ。もちろんありますよ。ですが、今は内緒です。その時がきたら教えてあげますよ」
ということがあり、僕は異世界へと転生した。
赤ん坊からまたやり直しらしい。
面倒くさい。