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第6話 嵯峨野巡り④ 老松

 ふと、時計を見ると、もう11時近くなっています。久しぶりだったこともあって、ちょっと時間配分をミスったかもしれません。先もありますので、そろそろ動かないとヤバイです。


 嵯峨野を重点的に回るコースだと、この後、二尊院→祇王寺ぎおうじ宝筐院ほうきょういん→清涼寺と行くんですが、今日はちょっとゆっくりしすぎました。この後のことを考えると、時間が怪しいかもしれませんので、ちょっと急ぎ足で出発します。



 帰りは芭蕉の高弟だった向井去来むかいきょらいの草庵『落柿舎らくししゃ』を左に見ながら緩い坂を下り、途中で右に折れて竹林の中を進みます。この辺りまで来ると、だいぶ観光客の姿が増えてきます。嵯峨野の中心街が近い証拠です。


 踏切を渡り、野宮ののみや神社の前を通り過ぎて、やっと大通りに戻ってきました。






 次は嵐電に乗るのですが、ここまで来たら、もう1か所寄っておきたいところがあります。



 それが、『老松おいまつ嵐山店』です。


『老松』さんは、北野天満宮の近く、花街としても有名な上七軒町に本店を構える老舗の和菓子屋さんです。

上七軒の本店では買い物しかできないのです(※ちょっと前は買ったものを食べることはできた)が、こちらは、奥に喫茶室があり、和菓子とお茶をいただくことができます。


 お昼近くではありますが、幸い平日と言うこともあって、ちょうど1卓だけ、空席がありました。ついてます。


 と、いうことで、早速、名物『本わらび餅』を注文しました。




 待つこと約10分。二段のおけに入って、本わらび餅の登場です。


 ちなみに二段の桶と言いましたが、わらび餅は氷水とともに下段に入っています。上段の桶にはきな粉が入っており、小皿に入った黒蜜とともに、お客が好きに味付けして食べるスタイルです。


 なお、こちらの『本わらび餅』、本当にできたてです。氷水の中で泳ぐわらび餅を口に入れると、まだ熱いんです。


 きな粉と黒蜜は付いていますが、ぜひとも最初の一口は、何も付けずに、熱いわらび餅だけを口に含み、自然の甘さを味わっていただきたいものです。

※私はわらび餅だけで十分美味しいと思います。


 この物価高のご時世のせいか、量が減って値段が上がったような気もします(※気のせいかもしれません)。でも、美味しさは変わりませんので、お越しの際はぜひどうぞ!




 帰る前に表の売店で『わらび餅』(缶入り)を買いました。お土産用です。こちらは缶詰なので、賞味期限も長く、重宝します。


 なお、飲食代と手土産購入代は、お店に申し出れば一括会計が可能ですので、一手間減らせるのも嬉しいポイントです。





 老松さんに行くなら、本当は『夏柑糖なつかんとう』を買いたいところです。この『夏柑糖』、夏蜜柑なつみかんをくりぬいて果汁を搾り、砂糖などで味を調え、寒天とともに、くりぬかれた皮の中に再び流し込んで作った和菓子です。


 夏蜜柑をそのまま容器にしているため、見た目のインパクトが凄い!

 でも、見た目は序の口です。老舗の職人の技を各所に感じられる凄いスイーツなんです。


 中の寒天は、甘さ控え目で、素材を生かした味は言わずもがな。食感も素晴らしい。寒天はこれ以上減らしたら固まらないという、まさにギリギリを狙って作られています。ですから、スプーンを入れると、ふるふる……いや『ふるっふる』です。



 控え目に言っても「最っ高!」なのですが、4月から10月までの期間限定販売(※期間内でも夏蜜柑がなくなるとグレープフルーツの『晩柑糖ばんかんとう』に切り替わる)なので、紅葉シーズンには買えません。


 私にとって、これこそが京都の紅葉シーズン唯一の不満です。




 実は、逆に冬場限定で、蜜柑ゼリー『好事福廬こうずぶくろ』というものがありまして、紅葉シーズンから冬にかけては、こちらを楽しむのも一興です。


 この『好事福廬』、京都市役所近くに店を構える、京都最古の洋菓子店『村上開進堂』さんの製品です。こちらも、かなり高レベルなスイーツで、食通で知られた池波正太郎さんの本にも登場するほどです。


 ただ、ネット販売もおこなっている『夏柑糖』と違って、『好事福廬』は、店頭直販しかおこなっておらず、生産量も少ないのが玉に瑕。確実に入手するためにはあらかじめ電話で予約する必要があります。


 昨日の今日の旅行ですから、予約もできませんでしたし、朝から嵯峨野に来ちゃいましたので、今から行っても売ってるか分かりません。名残惜しいですが、次回以降のお楽しみにします。




 ちなみに、今これを書いていて気付いたのですが、老松さんは京都駅の伊勢丹に支店を出してます。で、わらび餅はどこの支店でも売ってます(※新宿伊勢丹でも)。



 もしかして、私、余計な重りを背負って半日過ごすことになった?(笑)



 そんなことには全く気付かず、八缶のわらび餅を背負った私は、意気揚々と、嵐電嵐山駅に向かったのでした。

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