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このまま死ねたらいいのにな。

作者: 村上

 このまま死ねたら、幸せなんだろうなと思う時が、時々訪れる。

 ネガティブな意味ではなく、とてつもなくポジティブな意味で。 

 ちょうど今がそうだ。

 緑に囲まれて、青空を見上げて ほどよく温泉に浸りながら、ほろ酔い気分の僕。

 いつ死のうか。

 最近、よくそんなこと考えている。

 どうせそのうち死ぬのだ。

 世の中、効率が凄く大事になっている。

 色々と無駄無駄だと言われたら、なんだか、生きていること自体が無駄に思えてくる。

 効率を大事にしている人達の人生は、無駄ではないのだろうか。

 死ぬのが一番効率が良くないだろうか。 


 今日は仕事を休んだ。

 急に会社に行きたくなくなった。

 行ったとしても、どうせ大した仕事もないのだが。

 仕事がつまらな過ぎた。

 ということは、ある意味、人生がつまらないということだ。 

 一般的なサラリーマンなので、一日八時間は仕事する。

 通勤時間や準備等も含めれば、十時間にはなる。

 一日24時間のうち、そのくらいは、つまらない時間があるのだ。

 それでも、給料は出るし、安定はしている。

 給料が貰えるだけありがたいと思うべきなのだろうか。

 だが、だからといって、別に楽しい訳ではない。

 無いものねだりというか、生きて行けるだけで、満足しろということだろうか。

 それでも、つまらないのだから、仕方がない。


 山の中腹にある温泉に入りに来た。

 秘境と言えば、秘境。

 でも、知っている人は知っているのだろう。

 客はちらほらと居るが、平日とあっては、混んでいない。

 メインは、宿泊客メインの宿だが、日帰り温泉もやっている。

 宿泊は中々、良い値段するので、自分みたいな安月給には、日帰り温泉だけでも十分だ。

 しばらく温泉に浸っていると、頭の中が空っぽになってくる。

 そのまま、何にも考えないように。

 すると浮かんでくる

 死にたい。

 ここは一度休んで、自販機で売っている、缶ビールでも飲もう。

 この温泉施設は、一日中過ごしていられる。

 休憩室で休みながら、缶ビールを一口。

 汗が噴き出した肉体に、染み渡る。

 時間が来るまで、何度でも無限ループできそうだ。

 あぁ、この段階で、もう色々とどうでもよくなり、今、死ねたら、最高なのではないかと思えてくる。

 

 再び、露天風呂に浸かる。

 ほろ酔い気分も加わり、あぁ、本当にこのまま死ねたらいいのにな。

 静かで、僅かに流れるお湯の音と、新緑の木の葉が風で揺れる音しかしない。

 さほど疲れていないが、それでも何か満たされているような幸せを感じる。

 こんなに気分が良いのは、久しぶりだ。

 新緑の季節。

 緑と眩しい光に包まれたて。

 温泉に浸りながら。 

 ほろ酔い気分で。

 ゆっくりと息を引き取りたい。

 でも、哀しいかな。

 心臓は動き続けている。


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