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傍若無人

 ムラクモ王は、優秀な部下を死なせない為に、降伏の白旗を掲げていた。正常な指揮官であれば、武装解除して本国の指示を待つ。それがルールだ。しかし、ホワイトジュエル・ガムノイアー大将は違った。白旗を引きちぎり、その白旗を持っていたムラクモ王国死守隊員を近くにいたSST帝国軍兵士に惨殺させた。まるで、SST帝国はルール等無いんだぞ。そういった内容のメッセージを見せつけるかの様に…。

 ウェザースではアースで言うTVやインターネットのようなものは無いが、活字印刷の技術は進んでいた。その為、新聞網だけはアースと大差無かった。AMTOC(アメノムラクモンチュア王国)の騎士団長であるブラックホール・レグムートは、急ぎムラクモ王を逃がす算段を始めた。部下を城に残して退避するのは、レグムートにとっては死よりも辛い選択であった。

 それでも、AMTOCの騎士団長として、成すべき事は国の未来の為に最善を尽くす事。それが今のレグムートに与えられた試練であった。ムラクモ王とレグムート他20人の最精鋭の近衛兵を連れ彼等はひたすら西を目指した。それが主君であるムラクモ王の指示であった。それは超能力でも何でもない直感的なもので、ムラクモ王の第六感(シックスセンス)であった。王の指示は絶対である。例えレグムートが騎士団長であったとしてもである。

 その頃、ムラクモ城内では、AMTOCの残党(死守隊員978人)がSSTに対して必死の抵抗を見せていた。ただ、全滅は時間の問題であった。逆になまじ必死の抵抗を見せるAMTOC死守隊員が、SST帝国軍団総大将のガムノイアーの怒りを買ってしまうことになる。

 「どけどけ!ワシが行く。剣を貸せ!」

 そう言うと、まるで蟻を踏み潰す象の様に次から次へとAMTOC死守隊員が、ガムノイアーの剣の餌食となった。

 「ふん。雑作もない。」

 ここにアメノムラクモンチュア王国は、SST帝国に実効支配される事になった。

 「ガムノイアー大将に報告電。」

 「どうした?」

 「何ィ!?ムラクモ王とレグムートがいないだと?逃げられたか…。三騎将のブラックホール・レグムートがいないのは、確かに不自然だな。」

 兵力をほとんど失わなかったSST帝国第一~第七師団は、本国に戻らず進路をハレルヤ共和国へと駒を進めた。アメノムラクモンチュア王国敗戦のニュースはハレルヤ・クラウディアス両国に速報で伝えられた。それを知り不安になったのは言うまでも無い。白旗を引きちぎり全員皆殺し。そのギャングや賊の様な野蛮なSST帝国の傍若無人な立ち居振舞いに対して、人民の怒りが高まっていた。

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