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絶対に死ぬわけにはいかない

 再び良好の話に戻そう。良好には女神になる理由があった事は述べたが、もし仮に戦争でウェザースにて死亡した場合、雲中良好と言う女性はアースに戻る事なく、アースで生まれた事実さえ抹殺される事になる。だからこそ良好は絶対に死ぬわけにはいかなかった。

 これは女神に成る者への高い能力と引き換えに支払う対価の様なものであり、過去には死亡した例もあった為、神がオートマティックに課した神が自らの失敗例を経て得た訓戒であった。

 とは言え、一度女神になった以上は、後には退けない。良好はひたすら生き残る事も頭にいれつつ、行動しなければならなかった。ただ、唯一の不幸はウェザースで死亡したらどうなるか、彼女が神の課した訓戒を知らない事にあった。

 そんな事をウェザースの人間もアースの人間も知るはずがなく、良好がそれを知るのはウェザース戦争で死亡した時である。過去の女神達も、任務の苛酷さに、程度の差はあれど自分が死亡した後の事を知る女神は存在しなかった。それにしてもやはり、女神とは悲しい存在であるとしか言えないが、ここまで来たら腹をくくるしかない。

 良好にとって、この戦争の行方を見届ける事は、彼女にとっても、ウェザースの未来にとっても、重要な事であった。情勢は、余談を許さないものの、AKH連合軍が圧倒的に数的有利を持ってSSTTを制している事は、変わる事の無い事実であった。とは言え、油断は禁物。団結力の低さがウィークポイントであった為、心配したが、幾重にも及ぶ戦いの連続で、高めあって来た絆は、数字以上に大きなものとなって、AKH連合軍を繋ぐ最大の武器になっていた。

 この絆こそがAKHの最大の強みであり、ここまでの戦争でSSTTを上回る最大の要因でもある。雲中良好は、第四方面軍司令官として、必ずしも最前線にいたわけではないが、後方支援や諜報に尽力して、AKHを陰から支えていたのである。

 ウェザースの運命を握る存在である彼女が、何者かを知る人物はクラウド王とレッドスター・バルザン位だろう。機密性の高い情報である為、各国首脳幹部でも良好の話はタブーであった。敵を欺くには、まず味方から。その文字通りの実行であった。良好の存在はひたすら陰日向にあったが、噂というものが一人歩きするものであった。

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