ウェザースの秋
AKH首脳は、出来れば年内にもSSTTに総攻撃を仕掛けて、一気呵成に片をつけたい。それが本音であった。しかし、それには多くの障害があった。それは、アニマライズソルジャーへの対策や、士気の問題である。
冬季戦闘と言う名目でミーティングは行っているが、冬季の戦いには、対策も何も無い訳でどの首脳も、冬季戦闘とはアニマライズソルジャー達の対策であると、共通理解していた。ブラックホール・レグムートをわざわざ呼びつけたのは、その為である。冬場の対策位、平和ボケしている3カ国でも分かる常識であった。レグムートは、100人の敵を倒すのに1500人の遊軍を失った事に触れて、アニマライズソルジャーの脅威を口にして、その無念を滲ませていた。
虎以外にも、サイやバッファロー、ゴリラに象と確認された動物はどれもパワーがあった。レグムートは、未確認の動物がまだ何種類もいることを指摘し、早急な対策の必要性を説いた。そして会議の終盤に、アニマライズソルジャーを産んだのはAKHの責任であると定義した。数で劣る事になったSSTTが、以前から暖めていた禁じ手に手を出さざるを得なくなったのは、AKH連合軍の責任であった。
ガビラムソンの戦いで用いられたアニマライズソルジャーはほんの一部である。実際、SSTTの指揮官であるストーム・スノー・エクセム中将の遺体は見つかっておらず、現場から逃走した可能性が高い。多くのサンプリングと共に。それをタイフウノメルザンティス皇帝に伝えた。そんな報告で、会議は閉幕した。決定打に欠ける首脳会議になってしまった事は、レグムートも不満だった。
その頃、SSTT城において、タイフウノメルザンティス皇帝の元へストーム・スノー・エクセム中将が報告を行っていた。
「素晴らしいぞ!よくやったエクセム!」
「ありがたきお言葉にございます。」
「このレポートには、成功率が上がって来たとあるが、実際のアニマライズはどうなんだ?」
「70~80%までアニマライズの成功率は向上しておりますが、まだ戦力の中核を担える程のものではありません。遊撃に使う程度にし、基本戦力は非アニマライズの方が良いかと…。」
「エクセムよ。お主の考えは分かった。きっとあの方も喜んでおられよう。お主の言う通りアニマライズソルジャーは遊撃に使う。」
今日のタイフウノメルザンティス皇帝はいつにも増して上機嫌であった。まだ、この時はエクセムもタイフウノメルザンティス皇帝もあの方もアニマライズソルジャーの致命的な弱点には気付いていなかった。それが明らかになるのはもう少し先の事であった。ウェザースの秋はアースの様に過ごしやすい気候と気温である。良好もそんな季節を楽しむ余裕があった。




