ピカットール河
KDAOの40万人の大軍勢がHRKに到着してから二日後、バルザンと良好も現地に到着していた。クラウド王の最高の返事にハウザー大統領は、感謝の意を表したが、それもつかの間。劣勢である事に変わりは無いが、敵勢力の制圧は即座に実行出来る事では無かった。
そして何よりも、SSTTは60万人もの兵力をどこから捻出しているのか、それを突き止めねばならなかった。
「はっ?今何て言った?」
「良好様、偵察に出かけましょう。敵勢力の具体的数と遊軍の状況を調べましょう。」
「なんかよく分かんないけど、バルザンがいるなら、付いてく。」
バルザラントは、クラウディアス城を出る際、バルザンにこう言われていた。
「劣勢は確実だが、私と良好様が来るまで何としても持ちこたえろ。」
バルザラントはとりあえずHRKの大将、イエロータイガー・セバスチャノス(3騎将)に戦況を確認してみた。
「KDAOの将軍のバルザラントです。状況は?」
「数字上は援軍誠に感謝致す。しかし、これまでの戦闘で、被害を受けている。負傷・死亡した兵も少なくない。折角遠路遥々来ていただいて申し訳ないが、ハレルヤ共和国内に一旦撤退する。」
HRKの黄色き輝は、一軍の大将とは思えぬ程の物腰の低さであった。その命令を受けて、バルザラントは援軍の進軍を停止して、KDAOとHRKの国境付近まで援軍を退避させた。無論、SSTTには、位置的に援軍の様子は分からない筈である。イエロータイガー・セバスチャノスはこういう時の為にHRKがSSTTに宣戦布告されて以来隠して建造していた川をせき止める兵器セキトームをこの段階で解放し、ウェザース最大の大河であるピカットール河をせき止め、騎兵や重装備の兵士にとっては致命的な状態で一旦撤退する事にした。
敵のSSTTのホワイトジュエル・ガムノイアーは、あの程度の軍隊なら、楽勝よ。とたかをくくっていた。ザザーザッ!!
「何だ?どうした?」
慌てるガムノイアーは既にヤバそうだと分かっていた。
ピカットール河を渡るには、本来カットール大橋を通らなければならないが、この橋もセバスチャノスの指示で、落としていた。その為半月かけてSSTTは進軍せねばならなかった。
「被害は?」
「騎兵団以外無事です。」
「そうか。その程度の痛みで済んだか。ならばゆっくり、確実にのんびり行こう。」
イエロータイガー・セバスチャノスはハレルヤ城からSSTTの様子を見ていた。
「そう簡単にはくたばらねぇか。総員第二種戦闘配置!」
その頃、両軍の戦闘が一事的に治まった時であった。女神のローブに身を包んだ雲中良好がレッドスター・バルザンと共にハウザー大統領の元にたどり着いた。




