表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/60

判決

 今、世界の人々みんなが判決を心待ちにしている裁判がある。

 ある人は無罪放免を、ある人は無期懲役を。

 その裁判は、長かった歴史の一ページにも残るであろう事件だった。


 被告人は、アンドロイド。罪状は、殺人。

 荒々しい犯行とは裏腹に、裁判中も投獄中もその立ち居振る舞いは素晴らしいもので、さながら貴族のように気品に溢れていたようだ。

 弁護士や裁判官の話を、まっすぐと受け止め、頷いたり返事をしたりとしっかりとした反応も見せており、裁判を観ている人はみな、本当にあの事件をこのアンドロイドが犯したのかと自問自答せざるを得なかった。


「被告人、アル・プロト。あなたは、己が犯した罪の重さについて、理解はしていますか?」

 検察官の質問に、アル・プロトは表情を変えずに答えた。

「はい、理解しています。しかし、その行為について、私は全くもって後悔はしていないのです。よって、反省はいたしません。何年牢屋に入れられようとも、この気持ちが変わる事は無いでしょう」

「……あなたは人を殺しているのですよ?」

「はい、殺しました。何も道具は使っていません。この手で、彼を何度も殴って殺しました。血のぬくもりを、まだ覚えています」

「……私からの質問は以上です」

 何の反論も無くされる返答に、半ば呆れたように笑っていた。

「弁護人のご意見は、いかがですか?」

「私からは何もありません。全面的に被告人の発言を尊重いたします」

「……分かりました。では、判決を言い渡します」


 その瞬間だけ、世界から音が消えた。みんなが、息すら止めて判決を待ったのだ。

「判決、被告人アル・プロトを死刑に処す。よって、ボディの廃棄及びデータ等の抹消を言い渡す」

 その判決が世界を震撼させ、あらゆるテレビ局や裁判所に問い合わせが殺到。電話線がパンクした。傍聴席でも異例の騒ぎが起き、会場が慌てる中、被告人だけが静かに微笑みながら、ゆっくりと答えるのだった。


「はい、宜しくお願い致します」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ