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勇者を断ったら、弟子が代わりになると言い出した  作者: あくありうむ
第二章 魔王討伐
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再会

ようやく、本題に入りました。

身支度を整え家を出る。改めて連中の位置を確認すると、既に一キロも進んでいた。


思ったより早い。恐らくネガンの手によるものなのだろうが、自らの作った結界をこうも易々と突破されていくのはなかなか来るものがある。


ネガンはかつて魔術を教えていた、いわば師弟のような関係だったやつだ。正確には学園の後輩なのだが。


彼女は僕以外では王国にて唯一の空間魔術使いだ。


その使い手の希少さと難易度の異常な高さから魔法とさえ揶揄される空間魔術だが、ネガンはそんな空間魔術の基幹を僅か半年で習得してしまった。・・・僕は三年かかったのだが。


僕が空間魔術を教わった師匠が「考えるな、感じろ」という超感覚型だったというのもあるし、ネガンに教える際はそういった経験を踏まえ、懇切丁寧に理論的に教えたという事もあるのだが、この差が示すのは彼女と僕の才能の差だろう。


今は経験の差から僕の方が上だが、あと二、三年もすれば追い抜かされるに違いない。


「っ、ともかく急がないと」


思い出に浸っているうちにネガンたちが結界のかなり深いところにまで入っていた。


これ以上侵入すれば、ネガンではまだ突破できないエリアに入ってしまう。


・・・まぁ、同行しているどこぞの殿下が、強引に何とかしてしまいそうだが。


ただ、そんなことをされてしまえば、結界が深刻なダメージをうけてしまう。最悪、一から作り直さなきゃいけなくなる。


「この辺り、かな」


二人の座標を特定し、僕の現在位置との距離を計測。空間に干渉しその値をゼロに近い数値へと変更する。ゼロにしてしまうと彼らと座標が重なり、はじかれるか、合体し異形な生物へと変化してしまう。そうなったらほぼ確実に死んでしまう。


また、通常であればこういった状況下においては、移動する彼らの座標を逐一書き換えるなどの情報の更新をし続けなければならないのだが、今は結界に仕込まれた術式が代わりに演算してくれる。


後は組み上げられた術式に魔力を流し込み起動するだけ。


起動と同時に視界が白く染め上げられ、次の瞬間には先程と似たような森の景色。


そして―――


「あ、せ、せんせー!」


「ああ、久しぶりだね。フェルト」


突然目の前に転移してきた僕に驚いた顔一つ見せず声を掛けてくる二人。


レインとネガン。王都にある学園に在学していたころからの付き合いである、僕にとって友人と呼べる数少ない存在だ。


二年前の『あの事件』以来、全くと言っていいほど交流が無かった為、気まずくなったりしないか勘案していたのだが、どうやら杞憂だったようだ。


「久しぶり、二人とも」


自分でも驚くほどスルッと言葉が出てくる。シエルへの対応について悩んでいた時とは段違いだ。


「せんせー!せんせせんせんせせんせs」


「お、おお、危ないなネガン。いや、なんて言うか全然変わらないな、お前は」


こちらへとびかかるように抱き着いてきたネガンを受け止めつつ、レインを見やる。本当なら彼らの近況など聞きたいことは山ほどある。このまま、思い出話に花を咲かせることも悪くない、なんて考えさえ浮かんでいた。


だが、咲かせるにしてもそれは彼らが伝えに来たてあろう本題を確認してからだ。


先日の一件については把握しているし、それに対して王国が、というよりレインが言いそうなことには予想がついていた。


彼は友情に熱い男だ。それは数年来の付き合いで理解している。そして同時に、国のためならそれらを脇において判断を下すことが出来ることも知っている。


そこから導き出される結論。自分でも少々うぬぼれが強いのではとも思うのだが。


僕の視線を受け止めたレインが真っ直ぐにこちらを見つめ返す。空気を読んだのか、ネガンは僕の懐から離れ、その様子を見つめている。


「フェルト、重要な話がある。言いたいことは沢山あるが、お前の事だ。大方把握している事だろう」


レインの問いには答えず、無言で続きを促す。彼の言葉はあくまで確認であり、どちらにせよ、要求は変わらないのだ。そして、僕の思いも既に固まっている。


「フェルト。お前に聖剣を。王国における勇者の座を継いで欲しい。お前以上の適任者はいない」


この通りだと、頭まで座下てくる。大国の皇太子が、ただの魔導士にだ。普通ならあり得ない状況。


そこには、様々な思いが込められているのだろう。なんだかんだで心優しい彼の事だ。国の大事を叶えると共に二年前の件も含め、僕がまた中央に戻れるよう様々な配慮をしてくれているのだろう。


それに対する僕の答えは、ずっと前から決まっている。


「ごめん」


「俺は、勇者にはならない」


定期更新頑張ります。

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