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勇者を断ったら、弟子が代わりになると言い出した  作者: あくありうむ
第二章 魔王討伐
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森の一画にて

主人公視点です。日常風景は書くのが難しい。

彼女を拾って早二年。


当初は治療が終われば、安全な場所に送り届けるなり何なりして別れるつもりだった。そもそも、僕がこんな森に来たのは人との関りを断つためだ。少女一人とは言え、いきなり目的に反するのもどうかと考えていた。


考えていたのだ。





朝。窓から差し込む光に、目を細めつつも目を覚ます。


一つ伸びをした後、簡単に支度を済ませると、リビングから漂う香りに体は既に強い空腹を訴えていた。


半ば、無意識のうちにそちらへ向かう。


リビングに入ると、食卓には既に二人分の朝食が並べられており、ある種の輝きをもって、僕を出迎えてくれた。


「あっ、師匠!おはようございます!!」


「ん、おはよ」


リビングと繋がっているキッチンで料理の後片付けをしていた彼女――シエルがいつも通りこちらに満面の笑みを向けてきた。


二年前、泥だらけでくすんでいたその髪は本来の輝きを取り戻し、金色に煌めいている。傷だらけだった肌は跡一つ無く透き通っていた。


元気いっぱいのあいさつに返しつつ、席に着く。


向かいには、片づけを終えたシエルが腰を下ろす。


「それじゃあ、いただきます」


「どうぞ、お召上がりください!」


食前のあいさつを済ませ、さっそく食事を始める。


始めに、ミルクの麦粥を。続いて、色とりどりの野菜が盛り付けられたサラダを。ミートパイにも手が伸びる。


シエルの作る料理はどれもおいしい。暮らし始めた当初は、火を起こすことさえ一苦労だったのだが、今では魔術とも疑ってしまうほどのスキルを習得している。キッチンは彼女の根城となっていた。


ただ一つ、気になることがある。いや、気になるというより、心配事。まぁ、僕側のものなのだが。


・・・シエルに不快な思いをさせていないか。


僕は女性への対応の仕方が不得手だ。分からないと言ってもいい。


故に、心配になるのだ。僕の対応で、彼女が気分を害していないか。


例えば、先程の朝の挨拶。


彼女の挨拶と比較するわけではないが、どこかぶっきらぼうなものになってしまっただろうか。彼女と一緒にいるようになってから毎朝反省しているのだが、どうしてか直すことが出来ない。深く考えしまうのだ。どうかえすべきかを。


シエルという名前も僕がつけたのだが、付けてあげた当初は、僕が決めてよかったのかと悩んだり。


と、心配事を挙げればきりがない。


これは別に、女性と関りが無かったからではない。寧ろ、これまでの人生の大半は異性との共同生活が常だったくらいだ。


ただ、当時共同生活をしていた者たちが少し・・・普通ではなかった。


だからだろうか、シエルの様なまともな(・・・・)女性相手だと、今までの異性らとのギャップもあり、余計緊張してしまうのだ。


さすがに、どうにかしなければ。なんて考えているうちに、食事は終わり、気づけば食後のお茶の時間となっていた。


この間、僕は自分から話すことは無く、彼女の話に相槌をいれるのみ。


・・・本当にどうにかしなければ。


「ん?」


いつも通りの一人反省会をしていると、僕の常時展開している感知術式に、何かが引っかかる。


この術式は、今僕らが生活している家から半径数キロをカバーしている大型結界の機能が一つだ。


結界は術式に現実の物質を組み込むことで生み出しているもので、この家も、結界の一部である。


「どうされました、師匠?」


シエルが当然表情を変えた僕に、不思議そうに声を掛けてくる。


「ああ、結界への侵入者を感知してね」


「侵入者、ですか。・・・排除を?」


言葉と共に、シエルの表情が、人格が抜け落ちたかのように機械的になる。


その様子は排他的なそれ。僕自身そうだから、そこまで気にも留めていなかったのだが。


「いや、おそらく僕の知り合いだよ。・・・友人といったほうがいいのかな」


僕が唯一まともに語り合える数少ない相手。


考えれば、二年間ずっとあっていなかった。


「何でここに来たのかはだいたい予想つくけど。一先ず、外で出迎えてくる。シエルは一度待機しててくれ」


「分かりました。師匠」


定期更新頑張ります。

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