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勇者を断ったら、弟子が代わりになると言い出した  作者: あくありうむ
第一章 プロローグ
2/8

魔王復活 王国サイド

第一章(予定)のプロローグです。後、三話あります。今日明日で、投稿しきりたいです。

『我こそは、天を喰らい地を滅ぼす、魔王グレイテストである』


それは突然、大陸全土に響き渡った。


『我は幾年にも及ぶ眠りから今、目覚めた』


人々は一様に首を傾げ、困惑した表情を見せあう。だが、一部の博識な、あるいは高位の者たちは、その言葉を理解し、青ざめた様子で願う。今、鳴り響いている言葉が全て偽りであることを。真実ではないことを。


『そして、ここに宣言する』


だが、現実は無常であった。


『これより我は、侵攻を開始する。これは世界に対する、宣戦布告だ』


その言葉と共に、空が輝きだす。人々は一様に目を細め、驚愕する。


空から巨大な岩石、獄炎をまとったそれが複数降り注いできたのだ。範囲は大陸全土(・・・・)


一撃で都市を壊滅させるであろう岩石を前に、殆どの人々は突如として訪れた破滅の危機に、現実を認識できないのか、立ち尽くす。


状況を把握している者達の中でも、現実を受け入れ、意識を瞬時に切り替えた者のみが迎撃のためにそれぞれの能力を開放する。


大陸の一角に位置する王国の中枢、王都においても、二人の実力者が王城の屋根の上にて迎撃態勢を整えていた。


かたや、王国の第一王子であり、王国だけでなく、大陸全土においても最上位の力を持つ魔剣士、レイン皇太子。


かたや、その才覚は千年に一人の逸材と呼ばれながら、基本引きこもりである少女魔導士、ネガン。


二人は異様な光景を前に、身を固くする―――わけでもなく、雑談をしていた。無論、迎撃準備に抜け目はないが。


「まさか、このタイミングで魔王が蘇るとは。お陰で、パーティーは中止となってしまったよ。全く、美しいレディたちとのダンスを楽しみにしていたというのに」


「はー、そうですか。・・・そんな事より、仕込みは終わったので、もう部屋に戻っていいです?ネガン、これ以上外にいたら焼け死んでしまいそうなんですが」


レインの演技がかったセリフに、ネガンはめんどくさそうに返す。その瞳はどんよりと曇っており、肩にかかる程度の長さの灰色の髪はぼさぼさ。体は既に城内へと向かっていた。


どうやら、ここに来たのは自らの遺志ではないようで、その服には明らかに引きずられたらしい、汚れと傷がついている。


「まぁ待ちたまえよ、レディ・ネガン。これを迎撃した暁には、君にはいくつかの褒賞を授与しよう。例えば・・・そうだな、城の禁書庫。あそこの一部の閲覧の許可、なんてのはどうだい」


その言葉に、帰りかけていたネガンの体が硬直する。


「それだけでは無いぞ。君の好きな菓子を好きなだけ。それと、君が欲しがっていた私的実践場。これもつけようではないか」


ネガンは考え込むようにうずくまり、数秒後、ポツリと呟いた。


「・・・王都外への外出許可も、付けてください」


レインは一瞬、納得と後悔、そしてそれ他の様々が混じり合った表情を浮かべる。だが、次の瞬間には消え去り、普段通りの笑みを浮かべていた。


「分かった。勿論だ」


ネガンは立ち上がり、改めて王国全土(・・・・)に向かって来る岩石に目を向ける。


「分かってると思います、けど」


「ああ、無論だ」


レインの了解の意を確認すると、ネガンは意識を集中させ、空間に干渉する。


その隣では腰に掛けている二振りの魔剣の内、右手側の剣を抜刀したレインが上段に構える。その手に握られた魔剣からは白き光が溢れ出し、一条の巨大な大剣と化していた。


「対象座標、掌握。展開」


ネガンが手を虚空に翳すとともに、魔剣を構えたレインの目の前に一つの大きな魔方陣が展開される。


「・・・どうぞ」


ネガンから向けられた言葉に無言の頷きで返し、レインは構えていた魔剣を魔方陣に向かって振り下ろす。


白き極光が魔方陣を切り裂くと共に、眼前に迫っていた岩石が。否、王国全土に降り注がんとしていたそれらが切り裂かれ、破砕音の一つ、衝撃の一つも残さず消滅する。後に残ったのは、極光と魔方陣ののご理である、白き欠片のみ。それらも、数瞬後に消失した。


「お見事、ですね。殿下」


「なに、君こそ相変わらずだね、レディ・ネガン。完璧な座標指定だったよ」


「・・・せんせーの方が、すごいです」


「・・・そう、だろうな」


レインは突然の危機から救われ、歓喜に沸く人々を眺めながら肯定する。彼にも確信があった。あの青年なら、友なら、たった一人でどうにでもなっただろうと。


だが、その彼はここにはいない。


「だとしても、君の功績が消えることは無い。褒賞は約束通り手配しよう。外出許可に関しては、少しかかるが」


「確約してくれるなら、問題ありません」


「ああ、保証しよう。私の名に懸けて」


ありがとうございます、と返すネガンに微笑みつつ、レインはこれから先の方針に関して頭を巡らせていた。


遠方を見やれば、大陸全土に迫っていた岩石はどこにも見当たらない(・・・・・・・・・・)。各国、迎撃を完了したのだろう。この程度の、攻撃で落されるほどどの国も甘くない。とはいえ、だ。


「これほどの規模の魔術を行使する。やはり、伝承通りの怪物か」


大陸全土が射程圏内、それはつまり、民を常に人質に取られているようなものである。


「ネガンの件もある。この状況下だ。帝国や教国を例に出せば、上も承認せざる負えないだろう」





定期更新頑張ります。

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