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勇者を断ったら、弟子が代わりになると言い出した  作者: あくありうむ
第一章 プロローグ
1/8

彼女との出会い

初投稿です。稚拙な文章にはなりますが、何卒よろしくお願いします。

彼女を拾ったのは、およそ二年ほど前の事だろうか。


当時、とある事情から政戦に巻き込まれ、王国の中央から追い出された僕は、国内でも未開の土地である『賢者の森』にたどり着いていた。


この森は、かつて世界を救ったとされる『賢者』が戦いの後に確認された最後の場所であるとされており、同時に凶悪な魔物がわんさかいる事からも誰も近寄らず、開発も行われていない。まさに秘境であり、追放者が身を隠すには持ってこいの場所といえた。


「まぁ、この森で生存できるほどの実力があれば、の話だけど」


先程、仕留めた魔物の死骸を見下ろしながら、何と無く呟いてみる。


全長五メートルは超えるであろうその魔物は、上半身が筋骨隆々の猿人であり、下半身はクモの胴体というどこかアンバランスな体型をしている。今は、上半身と下半身が分かれているため、多少ましになっているが。


その不気味さに比例するように、この魔物は強い。あらゆる属性の魔法に対し異常な耐性を持ち、物理攻撃も通りずらい。挙句、通常であれば魔物というものは核を破壊すれば確実に葬れるのだが、この魔物は核さえも再生させてしまう。


「ギルドだと、このレベルの魔物は最上級の危険度クラスに分類されるんだけどな。この森だと、これでも中の下っていう」


師匠から話は聞いていたが、改めてこの森の異様さを認識し、ため息をつく。


とはいえ、先を憂いていても仕方がない。この森で隠居すると決めたのは自分自身なのだ。今後、一部を除いて、人とは関わりたくなどない。もう、くだらない争いはこりごりだ。


「一先ず、血の匂いを嗅ぎつけて他の魔物が来る前に、これを処理しないと」


意識を集中し、空間に干渉する。やがて魔物の死骸が、不可視の何かに握りつぶされるように圧縮され、『消失』する。


「これで、よし。とりあえず、住処になりそうなところを探してみるか」


死骸が跡形もなく消え去った事を確認し、一息ついて行動を再開する。


その時、視界の端の茂みで何かが動いたのを捉えた。


「・・・誰だ」


瞬時に体勢を整えつつ、何かがうごめいた場所に意識を集中させる。


この森だ。たとえわずかな事象であっても警戒するに越したことは無い。


空間に感覚を同化させ、何かの形状、状態を探る。


形状は人型。体格は一般の女児程度だろうか。状態は・・・息が荒い。弱っているのか?


しばらく、様子をうかがうが、特に向かってくることは無く、むしろ状態が悪化しつつあるようだ。


そこで、警戒心より好奇心が上回り、一先ず正体を明かそうと茂みを『消失』させる。


「え?」


そこにいたのは、およそ十歳ほどの少女。泥と血にまみれ、息も荒い。明らかに衰弱している。


魔物の罠である可能性は高いし、何よりこの森にどうして少女がいるんだという疑問も大きい。だが、万一本当に人間の少女だった場合、これ以上何もしなければ生死にかかわる。


少し悩むが、一度接触してみることにした。


空間に干渉し、魔物だった場合いつでも対処できるように警戒しつつ少女に近づき、触れてみる。


その体は冷たく、鼓動は小さい。


ふと、少女のうつろな瞳がこちらを捉え、何かを伝えようとしているのか口を動かす。だが、それは明確な言葉とはならず、口パクをしただけで終了した。


とはいえ、問題はない。


「助けて、か」


口の動きで、ある程度の言葉は察せる。ここまで近づいて、出た行動がそれなのだ。かつ、触れられれば、対象の詳細は理解できる。この子は間違いなく、人間の少女だ。


どういった経緯でこの森にいるのかは気になるが、ともかく今は救命が優先だ。この場では緊急的な処置を行い、本格的な物は改めて腰を据えられる場所で行おう。


方針を決め、彼女の治療に着手する。


これが、僕と彼女の出会いだった。

定期更新頑張ります。

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