口に出してからじゃないと始められない男
「あまりやったことはないけど、ジグソーパズルを始めるか。よし」
男はジグソーパズルに取りかかる。
「暇潰しにやることが何もなくて、仕方なくこれにしたから、あまり真剣になりすぎるなよ。よし」
男はジグソーパズルの1ピースを持ち、じっと見つめる。
「これは、明らかに角が丸くなっているから、四隅のどれかだよな。よし。」
「まずは、四隅を全部集めておいた方がいいよな。よし。」
男はジグソーパズルのピースの山から、角の丸いものだけを選んで隅に置く。
「ひとつの辺が平らなものがフチに来ることは分かっているから、とにかくそれを探せば良いんだな。よし。」
「そのついでに、空は全部青色だから、青色が含まれているピースも、一緒に探しておこうかな。よし」
男は必死でピースの山から、ひとつの辺が平らなものと、青色のものを漁る。
「祐一郎? ご飯なんだけど。部屋に誰かいるの? それとも電話とかしてるの?」
「まだ、1ピースも入れてないけど、ママに呼ばれたから、ジグソーパズルをやめて、ご飯にするか。よし。」