目の利かない話
こんにちは、紫雀です。
昔、私がゴルフ場に勤めていたころのことです。
滅多に休みのない勤め先でしたが、たまのお休みには
独身貴族らしく、私も、優雅に旅行をしたりしていました。
そんなある日、どこかの博覧会に行き、土産物店で
一対のブローチをみつけ、それがとても気に入りました
七宝のような輝きを放つ、赤と青の蝶の意匠で華やかで美しいブローチです。
しかし、驚くことにその値段はあまりにも安価です。
でも、かまいません。どんなに安かろうが、
このブローチが美しい事に変わりはないし、当時着ていた
藤色の制服に似合うであろうことは、十分想像できたのです。
それを買い求め、翌日の勤務から、ブローチをつけて仕事をしました。
そのブローチは、目ざとい社長族の奥様たちのお目にとまったようでした。
数日たったある日、フロントで伝票を書いていると
ゴルフコースから戻ってきた四人の奥様達が、声をかけてきました。
「Sさん、その胸のブローチ美しいわネェ、どこで、お買い求めになったの?」
「とてもきれい、七宝焼きに見えるけど、高かったでしょう?」
「ほんとにすてきね。私もほしいわ。百貨店でかったの?」
普段、何不自由ない、お金持ちの奥様たちは、私を取り囲んで
言いたい放題の質問を浴びせてきました。
狙い通りの反応に、私は笑いをかみ殺すのが精いっぱいでした。
一通りの質問と憶測が終わった後で、おもむろに言いました。
「このブローチは、旅行先の土産物店で、一対100円で売ってたんです。
安すぎてびっくりしたけど、でも、とても綺麗でしょう?」
一瞬の沈黙が走りました。
あまりにも予想外の答えに言葉を失ったようでした。
そして、百円の物を高級品と勘違いしたことを恥じたらしく、
奥様達はノーコメントで、そそくさと、食道の方へ行ってしまいました。
価値観とは、一体何のでしょう?
人のつけた価値観(値段)で、物事を見る事は本当に正しいことなのでしょうか?
以上ちょっと、疑問のわいた紫雀の体験談でした。