彼じゃないもん。悟っちゃった話。
こんにちは、紫雀です。
山形県に伝わる民話に「悟りの化け物」と言う話がある。
炭焼きで生計を立ててるオヤジがかんじきの木を取るために
山に分け入り暗くなったので、炭焼き小屋に泊まる事にした。
(かんじきとは雪の野山を歩くための道具)
囲炉裏の火で餅を焼いたり、かんじき用の木を
温めたりしていると、誰かが小屋にはいってきた気配がする。
入ってきたのは、目をらんらんと輝かせ髭も髪ももじゃもじゃな大男だった。
大男はオヤジの考えている事をことごとく当てる。
『これは悟りの化け物ではないだろうか』
オヤジは一言もしゃべらなかったのに
頭の中をすべて読まれてしまい、大男を気味悪がる。
……という内容である。続きはググってみてね。^^
この話はひとまず置いといて、
短大生の時に大学生の弟の所に
遊びに行ったことがありました。
大阪の街が初めてな事もあり、興味津々で通天閣とか
グリコの看板のある道頓堀とか。色々見て回り
帰りの電車の中で、手慰みに中学の時に流行った
ペン廻しのやり方を教わっていました。
「ああっ、違う、へったくそだな~。」
弟は、そう言いながら、私の手からペンを受け取り
器用に親指の周りで一回転させ持ち直して見せる。
「ほんと、器用だな~。無理、うまくできない。」
言いながら上手にまわせず、床に転がったシャープペン。
拾いに行って顏をあげると斜め前に座った男性と目があった。
正確には、席に座った時からジーっと見られていた。。
眼を伏せて気がつかないふりをして、そっと席に戻る。
「ちょっと、貸してみ。こうやるの」
その視線に鈍感な弟はさらにコツを伝授せんと一所懸命
実演しながら説明してくれるのだが、実の所、私は
『ああっ~。この会話、そろそろやめたい』と思っていた。
だってだって、この斜め前に座る大学生風の彼の視線は
うらやま視線だったのだ。(;´Д`)ノ
そんな「いいなぁ~。彼女いてうらやましい」
みたいな顔でこっち見ないでくださいよ。
こいつ、彼じゃないから、弟だから、羨ましくないから。
『あーっ、めっちゃ説明したい。』
彼の思考を悟ってしまった私。
こういう瞬時に他人の考えがわかってしまう事って
誰にでもままある事だと思うけど、
説明なんかできるはずもなく、終始うつむき加減で
彼の前を通りすぎ、ふたり目的の駅でプラットフォームに降り立った。
「何、何で途中からだまったの?」
「イヤ、別に……。」
鈍感すぎる弟よ。
ほんと、幸せな奴。
そう思いながら苦笑する。
ちなみに当時、弟は彼女持ちだった。
まぁ、私もその時、彼がいなかったから、
よけいに大学生の気持ちがわかったんだけどね~。
若かりし頃、こんな話がありました。
以上、紫雀の体験談でした。