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《1》

はじめましての方々は、はじめまして!

何らかの形で私の事をご存知の皆様は、遠路遥遥ようこそ!

売れる気配の無いファンタジー作家(自称)335 遼一でございます。


これより書かせて頂きますは、自身が創作した空想超未来ファンタジーSF【世界暦構想シリーズ『ヒーローの居る町』】となります。

如何せん素人の作品ゆえ、目に余る点も多々あるかと思いますが宜しければお楽しみください。

ココでのひと時が、どうぞ有意義である事を願いまして…


★なお本作は2009年にエブリスタ様(旧モバゲータウン)にてweb携帯小説として連載&大賞に応募した物の箸にも棒にも引っかからず閲覧数も一桁と悔しい結果に終わったものに、大幅な加筆、修正を付けた作品です。

 連載当時のオリジナル版(初版)とは大きく異なる点がございます。

 時は、主たる燃料が化石燃料から電気エネルギーへと変わった未来。

 残念ながら車やバイクなどを宙に浮かす技術は未だ、一般家庭向けには実用化に至らず、漫画に出てくるような家庭用の青いネコ型ロボも完成していない。

 しかし地球外知的生命体、つまりは『宇宙人』の存在は公とされ、人類は様々な知的生命体の住む星との交流を持つようになった。

 だが何事にもメリットとデメリットはある物。

 星間交流、交易が盛んになるほど、この星を訪れる宇宙海賊や宇宙犯罪者、果ては怪獣に至るまで、その数は増加の一途を辿った。


 そして今日もまた、世界の何処かに宇宙からの侵略者が現れていた。


『わーっはっはっはっ‼ 聴くが良い、青き星の民達よ! 私の名はカーヤ・イナミナ! 近い将来、全宇宙を掌握し、絶対王者となる者じゃ!』

 東方の、とある島国にある町。

尾ノ枝町(おのえちょう)』の上空に、ドーム球場をそのまま小型化させた様な形の物体が、派手派手しい光を放ちながら飛来した。

 世間一般に言うところの『未確認飛行物体』。

『UFO』という奴だ。


『光栄に思うが良い。此度、厳選なる()()()()()の結果、この辺境の星に拠点を築く事となった! 先ず手始めに、この小さな島国を支配下に置き、全銀河掌握の要とする! 抵抗しても構わんがぁ…、するだけ無駄じゃぞ? なにせこの艦に積まれた兵器は、どれも『宇宙ブラックマーケット』で買った最新型じゃからな! さぁ、大人しく降伏するが良い! わーっはっはっはっ‼ わーっはっはっはっ‼』

 UFOの上から飛び出した拡声器から、物騒なことを言う少女の声が町中に響き渡る。

 実際UFOの下部からは大砲と思しき大きな筒が飛び出し、住宅が密集している区画に向けられていた。


 ところが、尾ノ枝町の人々は空を見上げようとしない。

 いや、全くの無反応という訳では無いのだが、せいぜい目線を軽く向ける程度。

 住宅街の交差点にたむろする主婦達はいつまでも世間話に花を咲かせ、小学校の校庭では子供達が昼休みのサッカーにいそしみ、杖をつくお爺さんはヨロヨロと散歩を続ける。

 いたってのどかな平日の昼下がりだ。


『はっはっ、‥ははっ、……はぁん?』

 あまりの注目されなさに、声の主は戸惑いを隠せない。


『‥き、聞こえておらんのか? おかしいのぉ…。『宇宙通販』で買った『週間! 侵略のすゝめ』の付録で付いてきた『侵略宣言作成キット』で何度もリハーサルしたから、大丈夫なはずじゃが…。言語翻訳機はぁ……、うむ、この前のように起動し忘れてはおらぬ。ミスは無い。‥ぐぬぬぅ、ならば何故じゃ⁈『大海賊キャプテン・イナミナ』の血を引く私が、何故これほどまでに無視されるのじゃ!』


「あ~、無駄無駄」

『おぉ、何奴じゃ!』

 ようやく得られた反応に、右往左往していたUFOは嬉々として素早く旋回し、声のした方向に船首を向けた。

 そこに居たのは、実用性重視の服装に身を包み、健康的な黒髪と、これまた健康的な体つきをした普通の青年だった。


 ()()()()()()()()()()()()

 その手には、食べかけのアンパンと、紙パックの牛乳(1ℓ入り)を持っている。


『ほぅ、殊勝な心掛けじゃな。早速、捧げ物を持って来るとは』

「ンな訳あるか、これは俺の昼食だ。貴重な昼休みに何してくれてんだよホントに…」

『そ、そうなのか? それは、残念じゃな…』

 拡声器の声は物悲しげにトーンを落とした。


「何だ、腹減ってんのか?」

『な、何を言う⁉ 誉れ高きイナミナ家の末裔であるこの私が、まさか空腹に堪えかね、たまたま一番近いこの島国を支配しに来た、とでも言うつもりか!」

 あからさまな動揺が、語るに落ちている。


「うわぁ、マジでそんな理由かよ。無いわー…」

『ち、違う‼ 違うぞ⁉ 断じて違う!』

 つっかえつっかえで否定しているが、よくよく聞けば『グーッ』と腹の音が重なって聞こえてくる。


「減ってんだな。‥ったく、仕方ねぇな…。ほら」

 青年は両手のパンと牛乳を名残惜しそうに見て、ため息混じりに差し出す。


『ふ、フン! だ、誰がその様な、粗末且つ食べかけの物を…』

「要らないのか? なら遠慮なく、」

『いる!』

 突如UFOから飛び出した二本のロボットアームが、彼の手からパンと牛乳を素早くかっさらった。

 運転手はマイクの場所から離れたらしく、拡声器からは、少し離れた位置からの物音が漏れてくる。


『しょ、食料じゃぁ~! 二日と十三時間ぶりの食料じゃぁ~‼』

 程なくして、涙ぐむ心底嬉しそうな声。


「お前、犯罪者に成り立ての新人だろ?」

 青年の問いかけに『ガシャーンッ‼』とアルミのお盆か何かを落とした様な音が響いた。

 図星だったようだ。


「どうせ装備に金かけすぎて、生活費も使っちゃった口だろ…」

『な、何故それを…。‥ハッ! さては貴様、エスパーじゃな⁈』

「否定はしないけど、読心系の能力は持ってないから。それと、今時そんな演説でビビる奴なんか居ないぞ?」

『そ、そうなのか⁈』

「考えてもみろ。このご時世、お前みたいな連中が現れるのなんて日常茶飯事だぞ? もうみんな、慣れちゃってるんだよ」

『成る程のぉ。『慣れ』とは、かくも恐ろしいものじゃ…』

 声の主は口に物を含んだ状態で、モゴモゴと喋りながら感心する。

 次いで液体を飲む音が聞こえ、最後に『はぁ~』と満足げなため息が発せられた。


「満足したか?」

『うむ、満腹じゃ。残りは備蓄庫にしまっておく』


(備蓄って…、『二日ぶり』って言った割にはえらく小食だな?)

「‥ま、いいや。そんじゃ、‥覚悟しろ」

 おもむろにUFОに近づいた青年は、利き手である右手を握り締めて振りかぶった。


『……へ?』

「加減してやっから、…出直して、来いッ!」

 風を切って突き出された拳がUFOを殴りつけた瞬間、UFOは凄まじい勢いで空の彼方へと飛んでいってしまった。


「う~ん、我ながら最長飛距離記録更新かな?」

『にょぁああっ⁈』と情けない叫び声も聞こえなくなり、青年は満足そうに頷いた。


「お~い、イチロ~!」

 名を呼ばれ、青年イチローこと、時翔(ときかけ) 一郎(いちろう)は声の方へと目線を向けた。

 彼の眼下。

 一番近くに立っている電柱の上で、一人の人物が両手を振っていた。

 女の子らしく可愛らしい容姿のその人物は、腹部に変わった生き物の描かれたフード付きトレーナーに身を包み、器用に電柱の天辺でしゃがんでいた。


「遅いぞヒカル、何やってたんだよ」

 イチローはヒカルこと、蘇我(そが) (ひかる)に文句を言うと、まるで下りのエレベーターの如くスーっと地上へっと舞い降りた。

 ヒカルはそれを確認すると、なんの躊躇もなく電柱からジャンプ。

 普通に考えれば生身で何メートルも下に飛び降りれば無事では済まされない。


 ところが彼女の落下スピードはまるで風船の様にゆっくりで、膝を胸に引付けると、体をクルクル回転させながらイチローの前で華麗に着地。


 …する予定だったようだが、着地の瞬間にバランスを崩して尻餅をついた。

 イチローが呆れて手を差し伸べると、ヒカルは苦笑しながらその手を利用して立ち上がった。


「ゴメンゴメン。来る途中で車に轢かれそうな猫と犬を助けたら、コントロールを失ったその車が、今度は歩道を歩いてたお婆さんを轢きそうになっちゃって、そのお婆さんを助けて話を聞いたら、どうやら道に迷ってたらしくて、それで道案内したら『お礼』にお茶に誘われて、のほほ~んとしてたら遅れちゃた」

「うん、最後の『のほほ~ん』が余計。あのなぁ、もう片付いたから良いけど、ヒカルはもう少し『パル』としての自覚を…」

「おぉ、何時もながら仕事が速いねぇ。ヨッ! 流石は『()()()()!』」

「ま、まぁな」

 不意に褒められ、小言を飲み込むイチロー。

 腰に手を当てながら、得意げな顔をしている。


「んで、()()()()犯罪者は?」

「『…捕まえた?』」

 だがヒカルの発言に、イチローの誇らしげな笑顔が困惑へと一変する。


「いや、だから進級課題。『犯罪者を捕まえる』」

「……あああああっ‼」

 イチローが頭を抱えて叫んだ断末魔の叫びの方が、よっぽど尾ノ枝町の人々の関心を集めた。



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