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清洲攻略戦・その四

「我は織田大和守家家臣。河尻与一」


「変ですね。守護代様はうちの軍に居ますけど。従わぬ貴方はただの謀叛人では?」


「商人風情が偉そうな口を叩くな! 守護代様を騙しておるのは分かってるわ! 貴様らを清洲から叩き出したらワシが織田大和守家をしっかりもり立てていくのだ!」


「馬を盗みに来たり、刺客を送ってきた貴方達に言われたくはないですよ」


「ええい! 我が槍の錆びにしてくれるわ!」


 河尻与一という人は、どちらかと言えば武骨者みたいだ。


 すでに信友はこちらに居るのに、未だにそれを認められないみたい。


 あと気付いてないと思ってるのかね?


 何人かは弓でオレを狙ってる。


 河尻与一はちょっと挑発をしたら、顔を真っ赤にして怒りの表現で走りだし槍を突いてきた。


 意外に強いといえば失礼になるかな。


 又左衛門とか慶次には劣るが、かなりしっかりと訓練を積んだ武士みたい。


「馬鹿な……。商人風情が……」


「海の上にも賊はいるのですよ。河尻殿。守護代様も居るのです。降伏してください」


 でも悪いね。生体強化した肉体だと、勝負は分かりきっているんだ。


 しかも慶次の槍も凄いわ。突いてきた槍を弾いた隙に彼の槍の柄の部分に刃を当てたら、すっぱりと切れちゃった。


 かなり重いけど、その価値あるな。


 あまりに呆気なく槍を切られた河尻与一は、茫然としたまま立ち尽くしている。





 その時だった。


 先程からこちらを狙っていた敵軍から、無数の矢が放たれたが……。


「……あの馬鹿者が。久遠よ。早く退け」


 逃げるのは間に合わないので槍で当たりそうな矢を落とそうとしたその時、茫然としていた河尻与一が突然オレの前に自らの身を呈して盾となった姿があった。


「おい! 久遠! 貴様何を!」


「理由はどうであれ命を救われたからには、恩を仇で返す気はありません」


「馬鹿な、ワシは……」


「勝負はまた今度で」


 河尻与一が何を考えていたのかオレには分からない。


 だけどこのまま残していくと殺されると感じたオレは、河尻与一を左手で抱えると一目散に味方の方へ退いた。


 そして弓の二射目がこちらに飛んでくる前に、大砲の轟音が戦場に響き渡り、敵軍の中に着弾したのが見えた。


 流石は滝川一益だな。見事なタイミングで一撃目から、本当に敵軍に大砲を当てたよ。


「かず! 無事か!」


「ええ、 河尻殿のおかげで。ケティ。治療を頼む」


「待て、ワシは!」


 味方の最前線には信長やエル達が出てきていて、なんとかそこまで無事に退くことが出来た。


 珍しく慌てた様子の信長に驚きつつ、矢を受けた河尻与一の治療をケティに任せる。


「敵軍は…… あれ?」


「一騎討ちに破れた上に、大砲に驚き農民が逃げ出したようで撤退したようです」


 すぐに敵軍が来るかと改めて見ると、敵軍は散り散りに逃げ出していて誰もこちらに向かって来てないや。


 言われてみるとこの時代だと、大砲ですら未知の兵器なんだよね。


 元々士気の高くない敵軍の雑兵が、大砲に驚き逃げてもおかしくはないけどさ。


 でも戦う前の大砲で敵軍の大将まで逃げるとは……。




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