表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

90/106

宗久と茶の湯

「うむ。茶室くらい作らねばならぬな」


 翌日オレは信長と平手政秀と共に、那古野城の庭で野点をしていた。


 エルに聞いたところによると宗久の義理の父は、わび茶を作り上げた一人とも言われる武野紹鴎なんだよね。


 千利休の師匠とも言われてる人だ。


 宗久自身はまだ若く現時点では後世ほど茶人有名ではないが、その道の第一人者とは言えるだろう。


 昨日の夕食の礼にと宗久から言い出したみたい。


 信長と平手政秀は茶道の経験があるらしく様になってるね。


 信長って服装や態度は別にして勉強熱心なんだよね、本当。


「出来れば領民も楽しめる、茶があるといいんですけどね」


「領民ですか?」


 史実の信長が持ち出したのは、茶道を政治的に利用しようとしたと言われてるし、その効果や意味は大きいと思う。


 でもこの時代のわび茶って、悪い見方をすると金持ちの道楽にしか思えないんだよね。


 そんなこと考えていたら、ついぽろっと余計なことを言っちゃって宗久に少し驚かれた。


「余計なことを言いました。申し訳ありません」


「面白いではないか。多くの人に嗜まれてこそ、茶の湯の意義があるのではないか? 久秀。どう思う?」


「……確かにそれが出来ますれば、その通りかもしれませぬ」


「ならばどうすれば出来るか、考えればよいではないか。食うものにも困る現状では絵空事だがな」


 時々ビックリさせられるね、信長には。


 史実では茶道を制限することで特別な価値がある物にしたが、この世界の信長は逆に広めることで価値がある物にしようとしてる気がする。


 完全にオレ達の影響だろうね。


「織田様ならば出来るかもしれません。尾張に来て私が一番驚いたのは、久遠様の奥方様が医術を領民に、無料で提供していることでしょう。そのようなことをした者は誰もおりませぬ。出来ぬと言った方が、いいかもしれませんが」


「悪いが堺や京でやるつもりはないぞ」


「その方が宜しいかと思いまする。畿内は未だ争いが絶えませぬ。下手をすれば巻き込まれましょう。ただ噂はすぐにでも届くでしょう。某が織田様の立場ならば、噂は大袈裟だと言い、女の身故に遠くに行かせられぬと断るでしょう」


 なんか宗久に茶の湯のクレームをつけたみたいになっちゃったけど、大丈夫かね?


 まあ宗久の茶の湯が多少変わっても影響はないだろうし、構わないんだけど。


 それはそうとケティの噂は、やっぱり広がってるみたいだな。


 信長は畿内にはやらないとはっきりと釘を刺したけど、宗久はそのうち噂は伝わると明言した。


 なかなか厄介なことになりそうだね。


「医者が欲しければ育てればいいではないか。無駄に坊主ばかり増やさずにな」


「若。そのような言い方はお止めなされ」


「確かに坊主は何処に行っても居ますが、医者はおりませぬな。坊主より医者を増やすべきだとの若様の言葉は、真にその通りかと存じまする」


 信長はオレ達の影響で、史実より更に合理主義になりかけてるのかもしれない。


 言うほど簡単じゃないけどね。


 信長も別に坊主が必要ないとは言ってない。


 ただ医者が足りなさ過ぎるから、増やすべきだと言うのは正しいんだよね。


 まあお金や技術的な問題から、この時代で医者を育てるのは普通にやれば大変なのは分かるけど。


 織田家はその点、今から医者を育てていけば将来大きな武器になるだろう。


 宗久の顔色が少し青い。


 多分信長がただのうつけではないと、気付いちゃったみたいだね。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ