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混乱する清洲

「清洲がこうもあっさり混乱するとはな」


 評定から数日後。坂井甚介が織田大和守家から離反したとの知らせが届いた。


 それとここ数日間は清洲の領民が診察してもらえないのではと、不安になり押し掛けて来ることがあったが、当面は診察を続けると話して落ち着かせている。


「清洲の領民の中には、戦になるならば駆け付けると意気込む者も居ましたよ。流石に熱くなりすぎているので、戦になるか決まってないと宥めておきましたが」


「一揆の話、冗談では済まされなくなったな。親父のところにも戦になれば味方すると、内応の使いを出してきた者が何人もおる」


 清洲では坂井家を討伐することも検討しつつ、信秀が送り返した首を返還して説得に当たっているようだ。


 当の坂井甚介は尾張上四郡を支配する岩倉織田家に臣従する意思を示しているが、坂井大膳がケティを暗殺しようとした話は尾張中に広まっていて岩倉にも拒否されている。


 少し調べたところによると、ここで坂井家を受け入れればケティ暗殺の黒幕にされかねないと警戒しているようだ。


「気の早い人達ですね」


 清洲はもうボロボロだ。


 正直なところ未だにやる気になっているのは、織田弾正忠家の支配になると権力を失う大和守家の実権を握ってる者達だけだ。


「若様。ここまで来ると一思いに、守護代様に隠居を勧めてはいかがでしょうか?」


「守護代の職を親父に譲らせるのか?」


「いえ大和守家の家督ごと譲って頂くべきかと。守護代様には出家して頂き、食うに困らぬ程度の禄でも与えればよいかと。それに断られたら戦の大義名分が整います」


 清洲攻略策はまだ一つしかしてないのに、ケティ暗殺未遂と坂井大膳の死はそれだけ清洲に大きな影響を与えている。


 エルは作戦を変更して、ここで一気に信友に隠居をさせることを信長に進言した。


「爺。どう思う?」


「守護代殿だけならば、もしかすれば。元々担がれて守護代になっただけで、実権はあまりない御方。条件次第でしょう」


「親父に話してみるか。使者は爺に任せる。かずのところの酒でも献上品として持っていき、話してみるがいい」


「お任せを」


 信友自身がどう考えてるか不明だが、清洲の実権は坂井大膳などの家老や重臣にあって信友にはない。


 平手政秀は先年の和睦も取りまとめたし、この役目は適任だろう。


 あまり混乱を長引かせると今川が出てきそうだし、隠居勧告をしてダメならば、戦をしてしまった方がいいかもしれない。


「戦になってもケティを連れていけば、それだけで敵が崩壊しそうだな。そうなれば前代未聞だぞ」


「一向衆といい、うちの患者といい農民も怖いですね」


「もし信友が隠居しても、恐らく坂井甚介は討たねばなるまい。今更こちらに臣従も出来ぬだろうしな」


 流れとは怖いもので、この数日で農民から武士まで戦になるとみんな思ってる。


 しかも戦う前からうちが勝つとみんな思ってるんだから、信友が少し可哀想になるよ。





「それはそうと一馬殿。この際、家系を少し詐称してはどうじゃ」


「必要ですか?」


「うむ。今後そなたや奥方が注目を集めた時の為に、少しばかり地位を上げておきたいのじゃ。詰まらぬことだが、それなりの家柄ならば軽く見られぬからの」


「そうですね。別に私としてはどちらでも」


 それとついでに平手政秀に家系の詐称を勧められた。


 正直あまり地位や権威は欲しくない。


  ただオレ達のやることを助けてくれてるの、平手政秀なんだよね。


 家中での後ろ楯でもあるし、必要だと言われると要らないとも言いにくい。


「何処も多かれ少なかれ、家系を詐称してますからな。あまり深く考えぬことじゃ。南蛮船の主が氏素性のわからぬ者よりは、怪しくとも馴染みのある家系である方が、周りは納得する理由になるからの」


「そうだな。その方が良かろう」


「ではそのように。お願いします」


 結局平手政秀ばかりか信長にも勧められて、家系を詐称することになった。


 戦国時代ってよく分からないな。



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