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対清洲攻略戦

「これはまた大物が釣れたな」


「如何致しましょう?」


 翌日オレは信長と平手政秀とエルと共に、末森に昨夜の報告に来ている。


 疑われることはないだろうが、報告は早い方がいいのは考えるまでもないしね。


「うむ。戦を仕掛けてくるやもしれぬな。岩倉が動けば少し厄介だが。蝮はこちらとの同盟に乗り気だ。牽制くらいは頼めよう。問題は今川だな」


 やはり戦になるのね。今川は動くか?


「少し宜しいでしょうか?」


「何か策はあるのか?」


「はい。こちらに来ている患者に、昨日の話を噂として流します。清洲の守護代様は医者を潰そうとしているので、診れなくなるかもしれないと」


 流石に現状の織田家で、清洲や岩倉織田家が連携して今川まで攻めて来られたら厳しい。


 そこで対策を信秀に話したのはエルだ。


 今川が動く前に清洲は潰さねばならないからな。


 もう喧嘩を売られてしまった以上は、土産を献上して油断を誘う必要もなさげだしね。


 明らかに挑発して暴発させるしかないか。


「捨て台詞を吐いた以上は先手を打つか。だがそれだけでは弱いな」


「では先日の策を変更して、守護様にのみ献上品を贈っては如何でしょう。その上でこちらで茶会でも御誘いしてみては?」


「その辺りが妥当なところだな。恐らく茶会には来れぬがな。信友は守護を城から出すまい」


「承知の上です。とどめとして南蛮船から大砲を二門程降ろして、領地の境で連日鉄砲と共に演習をして撃ちます」


「……そんなこと聞いたことないな。だが馬揃えのようなものか。明らかに挑発と威嚇になるな」


 エルが最終的に提示した策は三つ。


 領民の離反を誘う噂と、守護と守護代の離反を誘う献上品を贈ること。


 そして領地の境界での軍事演習だ。


 戦が起こると周囲に噂を流して境界で大砲と火縄銃で演習するなんて、本当に来るなら来てみろと挑発すると同時に威嚇にもなるだろうな。


 信秀達は演習という概念がないのか少し戸惑いの表情を見せたが、その効果はすぐに理解した。


「向こうが怖じ気づいたら、戦わずに屈したと周りは見るか。こうして考えると牧場での賊はいい時に来てくれたな」


「はい。鉄砲は訓練しないと命中率がよくありません。これを機会に練習させるのもいいと思われます」


「怖い策を考えよるわ。出て来たら大砲で吹き飛ばして、出て来ねば武士として臆病風に吹かれたと、噂を流して信友は終わりだな」


 本当怖い策を考えるよ。


 戦になると周りに思わせておいて、向こうにない火力で演習するなんて。


 武士のプライドを折る気満々だもん。


 しかも贈り物をすることで、敵はあくまでも守護代だとはっきりさせたんじゃ、守護は動かないだろうな。


「しかし銭がかかる策だな」


「長々と小競り合いをするよりは、よいかと思われます。農閑期には領民を雇い工事をしたいので」


「良かろう。準備を進めるがよい。兵は那古野と末森から出そう。二千も集めれば万が一出てきても勝てるだろうしな」


 時は金なりとはよく言ったもんだよね。


 信秀はかかる銭を考えて少し呆れたように笑ったが、否定はしなかった。


 長々と小競り合いをするよりは領民に銭をばら蒔き領内の景気を上げる方が、長い目で見たら得だろう。


 対清洲攻略戦が静かに始まるね。


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