諸々の相談
「津島港の拡張にコンクリートは止めた方がいいかと。未来にあったコンクリートですと、耐久年数が50年から長くても百年です。未来のように、定期的なメンテナンスや補修をするなら別ですが」
津島港コンクリート計画はあっさり頓挫した。
コンクリートがそんなに耐久年数がないなんて知らなかったよ。
「ローマン・コンクリートという、古代ローマ帝国で使われていた物でしたら耐久年数も長くいいのですけど。南蛮船は運ぶ物が順番待ちの状態なのでオススメしません。材料の火山灰は小笠原諸島にあるんですけどね」
「そんなに運ぶ物があるんだ」
「銅銭は元より、生糸・絹織物・木綿織物・鯨・鮭・昆布・ 砂糖・蜂蜜は売れ筋ですので、優先して運ばせてます。後は鍛冶職人の使う鉄と、武器や火薬等々運ぶ物が多いんです。ああ、今は新しい麦も運んでますね」
ダメだ、必要な物が多すぎる。
「港は現状ですと浚渫と埋め立てによる浮き桟橋。撥ね釣瓶式クレーンが工期と費用を考えると妥当です。それならば津島の人達で保守管理出来ますから。資金は確かにありますが、河川と道路整備が先ですね。特に津島と熱田、そこに那古屋と末森と清洲間の道路整備は早めに始めたいです」
道の整備か。
確かに津島と熱田の間の道の整備は早めにやりたいね。
船の輸送力が限られてる以上は、尾張で作れる物は尾張で作らないと。
せっかくある津島と熱田を、織田家の経済の中心地にしなくちゃ南蛮船の輸送だけじゃ限界がある。
「この冬は津島の拡張工事と、牧場の堀で精一杯か」
「そうですね。直轄地に津島と熱田など、協力的なところの人ならば銭で雇えます。しかし同じ織田家でも家臣の領地ですと、そちらはそちらで賦役をするかもしれませんから」
この時代って面倒なんだよね。本当。
同じ織田家でも家臣の領民なんかは、大々的に工事をするなら勝手に雇うと問題になるだろうな。
封建時代だから、何事も上から話を通さないと文句を言われそう。
まあ信秀の命だと嫌がりはしないんだろうけどさ。
しかし史実の信秀亡き後を見ると、こちらから頼んでまで家臣に力を付けてやるのはまだ考え物だ。
向こうから歩み寄るなら受け入れるけど、織田弾正忠家ですら現状では絶対的な力はない。
オレ達の改革も、当たり前のように自分達が利益を受けられると思われたら困る。
津島や熱田だって向こうから歩み寄って来たんだしね。
一部はこちらから声をかけてもいるけど。
織田弾正忠家の家臣として振る舞いながらも、独立色の強い者は結構居るんだよね。
まあ彼らの言い分もあるんだろうし、一概に非難する気はないけど。
しかし現状の日本に必要なのは中央集権だろう。
そしてその為には織田弾正忠家に力を集約するしかないんだ。
どんな統治法を選んでも利点と欠点はあるけど、歴史を見ても日本という国は一度一つに纏まる必要があるだろう。
「とりあえずやれる範囲でやるしかないか」
「農繁期が終われば清洲が動くかもしれません。それ次第ではまた状況が変わります」
「なんかちょっと煽るような噂をばら蒔くと、暴発しそうだな」
「一応攻められてもいいように、大砲を二門降ろそうかと思います」
「あれ野戦で使えるか?」
「この辺りはまだ運べるでしょう。清洲の現状だと使うまでもないと思いますが」
今川は今のところ攻めてくる様子はないらしい。
怪しいのが清洲だけど、花火とケティの治療で人心は離れつつある。
そうそう線香花火がよく売れてる。
原料が火薬だから悪用されないように、高めの値段にしたんだけどね。
津島を訪れる商人がお土産にと買っていくんだ。
花火とはなんぞやと知らぬ人達でも、あれを見れば分かるしね。
火薬は高くて貴重だから、今のところ花火にして売れるのはうちだけだろう。




