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稲刈り

「へ~、みんな楽しそうですね」


 対清洲戦略が密かに動き出したが、この日は信長と共にエル達を連れて信長の直轄地の農村に来ていた。


 今後の農業改革の為の視察というのが目的であるが、単純にこの時代の稲刈りを見たかったというのもある。


 未来では綺麗に並ぶ稲を機械で一気に刈る様子が秋の風物詩だったが、この時代の稲刈りは全く違う。


 そもそも稲作のやり方が違うところも多いんだよね。


 未来のように均一な間隔を開けて稲を植える正条植というやり方ではなく、乱雑に植えたり車田植という植え方をしたりと場所により様々だ。


 根本的に田んぼの形も違うし、前提となる地形も平坦な場所ばかりではない。


 これ本格的にやるなら田んぼの区画整理から必要だよね?


 流石にまだ無理だなぁ。


「やっぱり村一つ雇った方が早いか?」


「最初はその方がいいかもしれません」


「村を雇うとはどうするのだ? まさか銭を与えて米を植えさせる気か?」


「そのまさかですよ。農民は収穫量に左右されず収入になります。こちらはやりたい方法をやらせる事が出来ますし、収穫は全て手に入れられます。豊作だと儲かりますが、凶作だと損をしますけどね」


 この件はエルと話していたんだけど、農業改革に農民が素直に従い真面目にやるとは思えないんだよね。


 宇宙要塞で調べたら明治に正条植を導入した時も、農民がサボったり言うこと聞かなかったなんて情報が出てきた。


 いくら新しい農業方法を教えても、真面目にやらないと意味ないんだよね本当。


 戦国時代は小氷河期だったなんて言われてたし、本当天候が良くないみたいだからさ。


 流石に領地全部で農民を雇うのはどうかと思うけど、信長と信秀の直轄地で場所と人を選んで来年の稲作は試験的に雇い入れでやってみたい。


「お前達、恐ろしいことを考えるな」


「新しい米は家で食べてる米に近い、美味しい米を作らせるんです。収穫を全部こちらが貰う代わりに、生活に困らないだけの既存の米と銭を支給した方が多分いいですから」


 流石の信長も農民を銭で雇い米を作らせるって言ったら信じられない顔をしてるけど、確かに普通にこの時代のやり方と米でやれば赤字どころじゃないだろう。


 水害や日照りの損をこちらが負うことになるけど、この時代にはない美味しい米だから長い目で見れば黒字には出来るはず。


「普通にやれば多分損をします。ですが私達ならば、最初はその方が効率はいいでしょう」


「確かにいきなりやれと言われても、素直にやらんだろうな」


「一年目が上手くいけば、通常の方法でも十分でしょうけどね」


 米の品種と簡単な農業指導は信長と信秀の直轄地全てでやって、一部の村には銭で雇いきちんとした指導をして米を作らせる。


 それを覚えたら元の年貢方式に戻せばいいんだしね。


 米の品種はF1にして、基本は全て織田家で買い上げればいい。


 この時代にはない美味しい米だから高く売れるだろうし、お酒や調味料に加工してもいいしね。


 農村の衛生面での指導とかも含めて銭で雇った村で先行して教えていけば、戦国時代ならではの問題点や難点も明らかになるし一石二鳥になると期待してる。


「津島に予想以上に銭が集まりだしてますからね。農村のテコ入れも本格的に出来ます」


「そう言えば爺が集めた鍛冶屋に何か作らせていたな?」


「ええ。あれも農具です」


 現状では生糸の染織や織物作りから始まり、醤油やかん水作りなど津島や熱田ではいろいろ進んでる。


 まだそれらの結果は出てないが、すでに平行して鍛冶や木工に大工などの職人を、平手政秀に頼んであちこちから集めてもらってるんだよね。


 京や近畿圏は戦ばかりだから、あっちから流れて来てる人間などで、尾張に定住して信頼出来そうな職人にはいろいろ作らせている。


 特に鍛冶職人は多くても困らないので、今も集めてるとこなんだわ。


 来年の稲作に鉄の備えた農具なんかは、今の時代にある物もない物もいろいろ作らせて備えてる。


 来年の秋には、きっともっと笑顔の農民達が見れるだろう。



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