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清洲攻略作戦

「清洲か」


「城を落とすだけなら簡単なんですけどね。津島で船から大砲を降ろして、清洲まで運べばすぐですよ」


 日暮れと共に涼しさが増してきたこの日。


 平手政秀が日が暮れる頃にやって来て、突然清洲を取る作戦を考えろという命令を持ってきた。


 日頃から三食の家ではちょうど夕食だったので、まだ家に居た信長と平手政秀も交えて考えることにした。


 でもさ、先日話してたよね? 清洲は何年か待てば潰れるってさ。


 元々清洲と共存していた節のある信秀が、なんで急に取る気になったのかね?


「問題は大義名分でしてな。向こうが主筋である以上は、何かしらの理由が要りまする。居なくなっても誰も困らぬとて、人の足を引っ張りたい者は多ございますればな」


「しかし、私がそこまで口出しをしていいのですか?」


「いや殿は一馬殿に、早めに武功を挙げさせたいと仰せでな」


「武功ですか」


「武士とは、武功があってこそという考えがあるのですじゃ。一馬殿は何かと功績が多いので早めに武功を挙げれば、批判を表だって言えなくなる」


  やはり信秀がやる気になったのは、オレ達のせいなんだろうね。


 そもそも清洲攻めなんて重要な戦の件を、オレと元服してろくに経験のない信長に任せるなんて大胆なことを。


 武功を稼げという親心か、この先も何かやるなら早めに発言権を高めておけという戦略か。


 どちらにしても必要と判断した訳だ。


 いくら戦国時代でも、新参者に武功を挙げるように手配する殿様は多くないだろう。


 考え方は古いけど合理的ではあるし、足りないモノを見付けて実行する力もある。


 流石に信長の親父さんなんだね。


「前提条件として攻めるだけの理由が必要ということと、清洲城を落とす事が目的なんですね」


「そうなるの。守護の斯波義統様と一族は、無傷で収めるのが最良でしょう」


 うーん、何気に難易度高くないか?


 守護って清洲城に居るんでしょう?


 大砲とナパームで花火大会出来ないじゃないか。


「エル。どう思う?」


「策はありますよ。要は守護様と守護代様の関係に楔を打ち込めばよろしいのでしょう?」


「それはそうですが、なかなか難しゅうございます」


「相手は主家と、そのまた主なのです。そこを利用出来るか、試してみるのはいかがでしょう。そうですね。まずは守護様と守護代様に、お酒や食べ物を献上致しましょうか」


「物で釣れるほど単純ではないと思うが」


「一度や二度の物で釣れるとは思ってません。ですが初めはそれでいいのです。こちらの力を見せ付ければいいのですから」


 とりあえず悩むときはエルの意見を聞くことにしたけど、その策に信長と平手政秀は少し理解出来ないようだった。


 流石に守護だけならともかく、守護代にまで献上する意味をすぐには理解出来ないか。


 でもオレには分かる。


「欲で目を眩ませるのか」


「欲で? ……そうか。信行の時のようにする気か」


「あの時ほど単純ではないでしょう。ですがすぐ近くの家臣が贅沢をしてると理解した時に、守護様や守護代様はいかがするでしょうか?」


 欲は人を狂わせる。


 しかも噂や話に聞くだけではなく、自ら実感して理解すれば尚更狂う可能性が高まる。


「そこで自ら冷静になり、思い止まるのでもいいのですよ。そうすれば次の策に移るだけですから。ですがこの毒は静かに回ります」


「普通は諜略を謀るか、噂を流す程度なのだがな」


「こちらはあくまでも主筋への献上品を贈っただけの方が、後々の為になりますから。私達とて生きていくには力が必要なのです」


「面白い。清洲がこちらの贈り物にどう反応するか見てみたい」


「では若。それで試してみますので?」


「失敗したとて問題なかろう?」


「確かに」


 これには複数の意味がある。


 一つは清洲の者達にこちらの力を見せ付けること。


 一つは贅沢をさせてみて、自分達より下の者がもっと贅沢をしてると思わせること。


 一つはこちらに敵意はないと油断させる意味もあるだろう。


 エルの怖いところは失敗した場合を想定して、そちらを優先的に考えてるところだ。


 こちらが礼儀を通して失敗しても、何のキズにも落ち度にもならない。


 この方法なら次の策はいくらでもある。


 流石に最高のアンドロイドは違うね。




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