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夏の終わりの初体験・その二

「一益。馬と牛は全て中だな?」


「はっ。夜は厩舎に入れておりまする」


「よいか! 賊は一人残らず始末せよ! 一人も生かして帰すな!」


 ほのぼの牧場のはずが一気に戦場になっちゃった。


 信長は何時ものうつけ様らしくないほど、気合いが入っていて兵達に檄を飛ばしてる。


 相手に気付かれぬようにこちらはかがり火も焚いてなく、人数が少ないこともあり月明かりの中で、那古屋城から持ってきた火縄銃と弓で全員が武装してる。


 今もどんどん人が集まってきて、早くも二百人は越えたかもしれない。


「来たな。よいか引き付けよ」


 賊は油断しているのか松明を片手にやって来た。


 オレ達は見付からぬように身を低くしたり、草むらに隠れながら火縄銃や弓で賊を狙う。


 こんなことなら三段撃ちとか練習させれば良かったよ。


「放て!」


 信長の合図で二百丁もの一斉に火縄銃が放たれると、その音が辺りに響き火薬の焼ける臭いがした。


 厩舎の方では慣れない音に馬が騒いでいたけど、慌てたのは賊の方だった。


「待ち伏せだ!」


「ずらかれ!」


「逃げろ!」


 バタバタと何人もの人が倒れたが、それでも半分以上は残っているだろう。


 賊達は火縄銃の音の数から牧場の警備ではないと気付いたのか、戦うことも牧場に火を放つこともせぬまま、初っぱなから逃げ出していく。


「追え! 逃がすな!」


 弓を射っていたケティなんかは二射目を放つが、やはり火縄銃だと二射目を撃つ時間が致命的だな。


 相手がまだこちらに突っ込んで来ればいいけど、バラバラに逃げられると火縄銃は使えない。


 信長はすでに火縄銃を放り投げて、槍を片手に賊を追い始めていて他の武士や兵達も続く。


 それはいいんだけど、ジュリアさんや。


 信長や慶次と並んで突撃するのはやり過ぎでは?


「あっちに四人逃げた」


「オレ達も追うか」


 まあ、ジュリアは自由にさせていいか。


 夜とはいえアンドロイドのケティは冷静に逃げる賊を把握しているので、追手の居ない賊をオレとケティと一益と益氏で追いかける。


 ケティは弓だけどオレと一益と益氏は槍だ。


 まさか槍を片手に走ることになるとは。


 リアルだと農家だったから鍬なら持ったこと何度もあるけどさ。


 槍はねぇ。


「逃げろ!」


「兵が居るなんて聞いてねえぞ!」


「一益。一人は生かして捕らえられる?」


「お任せを!」


 逃げた四人のうち一人はケティが弓で射ち倒して、一人は益氏が槍で突いて倒した。


 そして一人は一益が槍の柄の部分でぶん殴り、生かしたまま捕らえることができた。


 オレ? 最後の一人を槍で夢中で突いてた。


 よく考えてみたら、リアルに人を殺した経験ないんだよね。


 震えたり吐いたりしなかった自分を、誉めてやりたいくらいだよ。


「ケティ。あとこの辺に居る?」


「居ない」


「さて、こいつは何か知ってるかね?」


「何も知らないと思う」


「まあ聞くだけ聞いてダメならいいか」


 勝鬨が聞こえて来たので信長達の方も終わったらしい。


 オレは人を自らの手で殺めたことを極力考えないようにしながら、一益が捕らえた一人を連れて信長達と合流することにする。


 大丈夫だ。オレは一人じゃない。


 ケティやみんなを守らないと。


 殺らなきゃオレを信じてくれてる人達が殺られるんだから。



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