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今川義元の苛立ち

side・今川義元




「花火か。つくづく憎らしい男よの。信秀め」


 また津島の噂じゃ。


 今度は花火なる華麗な御業を津島で披露したことで、人々の関心を集めておる。


 まさか駿府にまで奴の名前が届くとは。


「恐ろしき事にございまする」


「そんなことは分かっておるわ。雪斎。だが玉薬を大量に使ったのは事実。安祥を攻められぬか?」


「あの信秀が玉薬を使い果たしたとお思いで?」


「そうは言ってはおらぬが、このままでは三河を盗られる」


「志摩の水軍衆でさえ、あの南蛮船には手が出せぬ様子。近付かなければ何もせぬようですが、近付くと大きな砲で撃たれるようです。南蛮船は少なくても数隻、多ければ十隻以上あるでしょう。あれを集められて戦に使われたら、駿府も危ういかもしれませぬ」


「バカな。駿府が信秀の手に落ちるというのか!」


「そこまでは申してはおりませぬ。されど海から砲撃されたら、我らに対抗する手はなく。殿の威信に傷がつくやもしれませぬ」


 バカな有り得ん。


 今川が駿府が織田ごときに攻められるなどあってはならん!


「雪斎! 南蛮船の主はまだ引き抜けぬのか!」


「難しゅうございまする。信秀も南蛮船の主には、相当に気を使ってる様子。それとあのうつけ殿は、権威を振りかざさぬと領民には評判がようございます」


「うつけがどうしたというのだ!」


「家臣というより友のように、南蛮船の主と接しておりまする。主の嫡男にそのような扱いを受ければ、居心地はよいでしょう。まして異国の者なれば尚更」


「なれば南蛮船を我らも手に入れるのだ!」


「それも難しゅうございまする。鉄砲ならば堺にて作られておりまするが、南蛮船や大砲は堺でも持っておりませぬ。南蛮人もそうそう自分達の優位性を、捨てるとは思えませぬので」


 冗談ではないぞ。


 信秀に駿府を攻められるなど。


 何か手はないのか!?


「殿。今は尾張より三河を考えるべきです。南蛮船は金の成る木。信秀も早々戦には使いますまい。寧ろ東三河を、確実にこちらに取り込む事が先決かと」


「あの松平の役立たずめ! 家中も纏めれず、自分では戦も出来ぬ癖に!」


「織田の力が増す前に東三河を取り込めば、信秀も早々好き勝手は出来ませぬ」


「そうだな。無い物をねだっても仕方あるまい。国力はこちらが上なのだ。だがそうなると奴が邪魔だな」


「こちらが東三河を押さえれば、松平など自ずと割れましょう。あとは安祥で信秀を消耗させれば、風向きも変わるやもしれませぬ」


「だが惜しいのう。噂の南蛮船。我が手中にあれば、尾張から関東まで覇を唱えることも出来ように」


「所詮は氏素性の分からぬ南蛮人。信頼してはなりませぬ」


「雪斎。三河の件はそなたに任せる」


「はっ。お任せを」


 信秀め。許さぬぞ。


 下餞の身でありながら。


 いつかかならず、その首晒してくれようぞ。


 花火などふざけた物で名を売って、いい気になっていられるのも今のうちだ。



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