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若と爺

「おい、かず何だこれは?」


「ぶどうの酒ですよ。遥か西の国だとワインと呼んでますけどね。そちらが甘めでこっちが渋めです」


 一応話が纏まった所でオレ達は信長と平手政秀と花見に戻るが、花見に来ていた若い衆がすでに出来上がってばか騒ぎしていた。


 どうやらジュリアが土産として持参したワインを飲ませて驚く彼らを見て更に飲むように煽ったらしい。


「これならオレも飲めるな」


 信長はその光景に驚いてるけどワインを勧めると平手政秀にも飲めと命じてほぼ一緒に口をつけた。


「ワシはこちらがようございますな。最近はこのような物まであるとは……」


 やはり信長は甘口が好みで平手政秀は辛口が好みか。


「この国だとまず手に入りませんよ。南蛮人と繋がりがある九州とか堺の人なら南蛮人から手にいれて飲んだかもしれませんけどね」


 歴史だと宣教師が大名にワインを献上したらしいけど、最初の宣教師フランシスコ・ザビエルが日本に来たのは確か1549年天文18年と来年のはずだ。


 南蛮人の商人なんかが個人的に持ってきたかどうかまで知らんが下手すると歴史だとこの人達が日本で初めてワインを飲んだ人になる可能性が。


 ……まあいいか。





「どうかしましたか? みなさん」


「お前。そんな貴重な物を何本も……」


「別に構いませんよ。欲しければまた持ってきますから」


 あれ、ワインのこと話したら会場がしらけちゃってみんな青い顔してる。


 実はワインはジュリアとか一部のアンドロイドが好きで宇宙要塞の植物工場でブドウから育てて作ってるから、在庫いっぱいあり過ぎて在庫処分にと持ってきたんだけど。


「飲まないならアタシが飲んじゃうよ?」


「オレにも飲ませろ! 二度と飲めん物だ!」


「てめえ! それはオレのだ!」


 しらけた空気を変えたのはワインの瓶をらっぱ飲みするジュリアだった。


 ジュリアに触発されたように二度と飲めないなんて大袈裟に騒いでまたばか騒ぎを始めた。


 うんうん。花見はこうでなくてはね。


「若。世の中広うございますな」


「爺。長生きしろよ。オレが新しい世の中を見せてやる」


「若……」


 それはいいとして信長と平手政秀が、なんかしんみりしながら二人だけでワイン飲んで話してる。


 史実の信長は酒を飲まなかったとも伝わってるし、まして今は14才の子供。


 もしかして平手政秀と酒をこうして飲むのは初めてか?


 この時代の酒に比べてワインは酒精が強いし酔ってるようにも見える。


 立場もあるのだろうが元々あまり説明やら自分の考えを人に話さぬ信長が酒に酔い本音を口にしたのかね。


 あれ? でもこれも地味に歴史変えてない?


 この人確か信長を理解できなくて自決しちゃうはずでは?


 気になってエルをチラリと見ると仕方ないと言わんばかりにちょっと苦笑いされた。


 信長と平手政秀はそれ以降口を開くことなく、ただ一緒に酒を飲みばか騒ぎをする人達を眺めてるだけだ。


 もしかするとオレ達はこの日初めて歴史の一ページに名を刻むのかもしれない。



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