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滝川さんがやって来た。……もちろんあの男も

 未来と違い涼しい夏も、津島天王祭が過ぎると終わりが見えていた。


「滝川資清でございまする」


「滝川益氏でございまする」


 そんな夏の終わりを感じるこの頃になると一益が言ってた一族の人が那古屋にやって来た。


 資清は一益の親父らしく五十代くらいのちょっと頑固親父っぽい見た目だ


 益氏は二十代半ばの働き盛りで一益の従兄弟らしく、こちらは一益と同様に威厳がありそうにも見える。


 ちなみに家族二人とも家族と付き従ってる者が居るので、三十人ほどの団体さんで来たよ。


 ちょっと多くない?


「長旅ご苦労様でした。えーと、仕官ということでいいのかな?」


「はっ。よろしくお願いいたしまする」


「近江に所領があったと聞きましたが?」


「親戚に渡して来ました」


「一益。うち所領なんてないんだけど。話したの?」


「はっ。父も皆もそれで納得して、参りましてございます」


 滝川一族みんなで来ちゃったけど、宇宙要塞のデータにある歴史を調べても滝川一族ってよくわからないんだよね。


 近江の甲賀郡に小さな領地があるのは一益から聞いたけど。


「すごく助かるんだけど、うち商人に近いよ? 本当にいいの? 武家らしく働きたいなら若様に頼むけど」


「構いませぬ。どうせ農民と変わらぬ身分なれば。一益同様によろしくお願いいたしまする」


「分かりました。禄は後で相談しましょう。銭だけはあるんで生活は保証しますから」


 一益は一体何をどう話して、親父さんやら一族を纏めて引き抜いたんだろう。


 お金はあるから給料は構わないし、仕事とかやりたいこと多いから助かるんだけどね。





「へ~。ここが噂の南蛮人の屋敷か?」


「こら! 慶次郎! 貴様はなんという格好を!」


 真面目そうな滝川一族が頭を下げた瞬間、中学生か高校生くらいの小汚ない信長が好きそうな悪ガキが猪を一人で引きずりながら庭に入って来たよ。


 資清がその様子に激怒して一益や益氏が睨む中、オレは驚きを隠せなかった、


 慶次郎ってもしかして前田慶次?


 年齢的には会ってるが。


「新しい殿様に土産を取ってきたんだよ」


「このたわけ者が!」


「美味しそう。貰っていいの?」


「おう、土産だからな。これから世話になる」


「うん。ありがとう。捌くから手伝って」


「お任せあれ」


 流石に一益がすぐに取り押さえようと動くが、それより先に反応したのはケティだった。


 慶次郎が取ってきた猪を受けとると慶次郎を連れて猪を捌く為に勝手口の方に行ってしまい、滝川さん達が呆然としているわ。


「申し訳ありませぬ。慶次郎には後でよく言って聞かせます故……」


「いいよ。気にしなくて。家は完全な武家じゃないから。私も武家のこと知らないし。それにしても面白いことするね。猪を狩って来るなんて」


 ジュリアはケラケラと笑って見てるし、エルも笑いを堪えてる様子だ。


 多分あいつが前田慶次なんだろうね。


「……面白いですか?」


「人がしないことをしようと思ったその考え方と、実行した行動力は面白いよ。家も武家からはみ出してるしね。ちょうどいい男かもしれない」


 一益はともかく他の人達は激怒したり顔色を青くしたりしていたけど、オレ達が笑ってるのを見て理解できない顔をしてる。


 どっかの漫画みたいにへそ曲がりなら、自ら歴史を作ることはしないんだろうけど、ああいうタイプって見てると面白そう。


「叱らないでいいよ。ああいう男の行動って、案外商売のネタになるかもしれないしね」


 誰が母親か知らないけど前田利久に嫁ぐはずの人も居るんだろうね。


 滝川一族のおかげでちょっとは余裕が出来るかね?




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