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津島天王祭!その三

 予期せぬ出会いで予定が狂ったけど、大橋家を後にしたオレ達は津島神社にお参りに来ていた。


 広い境内には武士から商人や農民まで様々であるが、流石に領主の息子である信長が歩くと道が割れていく。


「本日はようこそお越しくださいました」


「なかなかの賑わいではないか」


「はい。弾正忠様のおかげでございます。今年は特に新しき奉納花火とやらをして頂けるそうで、私たちも楽しみにしております」


 本殿に近付くとすぐに数人の宮司らしき人達が、挨拶に来て世間話程度の話をしてお参りする。


 今年は例年にない人が集まってるようで、理由はうちの南蛮船の影響で尾張国外からの商人などが多いことと、奉納花火の噂が広がってるせいだろう。


 花火に関しては誰も見たことがなく噂が噂を呼んでいて、何をするんだと武士から農民まで興味津々らしい。


 それと南蛮船も信秀の命令で、今日と明日は津島にて姿を見せておくようにと言われてる。


  これを機会に南蛮船を人々に見せることで、織田弾正忠家の力を内外に示したいのだろう。


 実際うちで密かに集めてる情報でも、南蛮船の存在は決して小さくはない。


 最初に献上したワインや絹に鮭に砂糖を、信秀は家臣や血縁の一族に配っていて、最近の戦の負けによる影響力低下を最小限で食い止めている。


 それに美濃や三河では旗色が悪いが、尾張で負けた訳ではない。


 信行派を潰したし恐らく史実よりも、織田家は安定し始めている。





 美濃とは同盟が決まっているし残る問題はやはり三河だ。


 三河安祥城がどうなるかにより今後の流れが変わる。


 個人的には史実同様に今川に渡して、三河は今川と武田との緩衝地帯でいい気もしてるんだよね。


 あそこは本證寺などの一向衆が強い土地で、松平時代の家康ですら家中が滅茶苦茶になり苦労したはず。


 下手に手を出すと織田家では火傷で済まなくなる。


 しかも三河で一向衆を敵に回すと、近くには伊勢長島も居るので尾張は一向衆に挟まれることになりかねない。


 一向衆と戦うには、最低限美濃を手に入れた後でなくばどうなるか分からないんだよね。


 それに今川もあまり早く叩き弱体化すると、武田が矛先を変えて海を獲てしまう。


 あの山賊集団は信濃で上杉と潰し合って貰わないと。


 出来れば数年は尾張内の改革に力を注ぎたい。




「凄いですね」


 夕方になり日が暮れ始めると、会場の天王川の畔にオレ達は移動していた。


 場所は予め用意していたようで、こういう時はお偉いさんは便利だね。


 会場では船に半円状に数百もの提灯を纏った巻藁舟がすでにあり、提灯に火をつけて準備をしている。


 未来と違い明るいネオンや街灯がないこの時代では、これだけの提灯を集めた光景は圧巻だった。


 ただあちこちから蚊取り線香の匂いがしてくるのが、少し気になるけど。


 かなり安く売ったはずだけど、今日売り始めたばかりなのに持ってる人がかなり多い。


 誰のアイデアか知らないけど、渦巻き状と棒状の蚊取り線香がよく見られて、両方ともに糸で結んで手で持って歩いてる。


 正直こういう外で持ち歩いて使っても、あんまり効果ないと思うんだけどね。


 なんか厄除けのお守りかなんかと勘違いされてる気も。


「虫除けの香。随分売れておるな」


「売るのは津島の商人に任せたので、上手く売ったのでしょう」


「疫病を退けるとでも言うたのであろう」


「虫に刺されにくくなる、だけなんですけどね」


 過大広告かもしれないけど、この時代それを悪いなんて言う人居ないんだろうね。


 信長までもが蚊取り線香の持つ人の多さに少し驚いてるよ。


 まあ一向衆の坊主が言ってることよりは遥かにマシだし、蚊に刺されなければ掛からない病気もない訳じゃないから、満更嘘ではないけどさ。


 さあ、祭りの始まりだ。


 花火はクライマックスにする予定なんだよね。


 道三見て行くのかな?


 出来れば見て欲しいな。



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