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信行派への対応と医者

「なるほど。それは面白いな」


 津島神社の祭りが待ち遠しいけど、やるべきことはまだまだある。


「内容は何でもいいのですけどね。御家中の者を競わせて褒美を出すというのがよろしいかと」


 今日話していたのは信行派の取り込みだ。


 ただ意味もなく物をばら蒔いても効果は限られてる。


 なので運動会モドキをすることを信長に進言していた。


 内容は信長の好きな相撲に、刀槍の模擬戦・弓・火縄銃の射撃・流鏑馬・馬術・長距離走、なんかを例題として上げておいた。


 史実でも信長は相撲大会とか開いたみたいだし、要は家中の人間を集めて競技を増やすだけだ。


 信秀にも参加してもらい、二人から優秀者や気に入った者にそれぞれ褒美を与えればいいと思うんだよね。


 刀剣に鎧や馬や茶器に酒や食べ物なんかがいい。


 今のうちから褒美を領地でない物に馴れてもらわないと。


「末森の者はあまり知らぬのでしょう? 一緒に何かをするのが第一に必要ですよ。負けた家臣にも土産として酒と食べ物を渡せば悪くは思わないでしょう」


 嫡男とはいえ幼い頃から那古屋城主だった信長は、末森衆のような信行派とはほとんど交流がない。


 冠婚葬祭しか顔を合わせぬ者を信頼するのは、双方無理だろうからね。


 正直この時代の武士は立場や主従関係がかなり曖昧だ。


 信秀自身も主家を事実上超えてるから、人のこといえないんだけど。


 信長の財力と嫡男としての力を見せれば、史実をみる限りよほど合わない者以外は従うだろう。


 やり過ぎるとうつけとの評判が変わりそうだけど、そもそも信秀って史実と同じく死ぬか怪しいんだよね。


 史実だと流行り病で亡くなるはずだけど、今の織田家ならケティが治療して完治させそうだしさ。


 最近のオレとエルは、信秀が長生きした場合を想定して考えてる。


 幸いなことにオレ達はそれなりに信頼されてるし、信秀生存のまま尾張を統一してしまった方がいい気もしてる。


 数年して織田弾正家の力が今の数倍まで上がれば、尾張統一も難しくはない。


 経済と食い物で尾張の民の信頼を得られれば、選択肢は無数に広がるしね。




「あと医者を早急に育てねばなりません」


「ケティ一人ではキツいか」


「今は問題ないでしょうが、領地が広がってから育てても遅いです。最低限育てるにも何年もかかります。それに噂が広がれば領外からも来るでしょう」


「武士が医者を育てるか。考えもしなかったことだ。だが考えてみればこれほど領内を治めるのに、相応しいことはないかもしれん」


 それと医者の教育は早く始めないと間に合わない。


 医療型のアンドロイドは他にも居るが、緊急時ならばともかく常時自由に動かせるのは何人も居ない。


 信長もここ最近ケティを頼る領民の多さが、気になっていたようだね。


 そしてケティが無料で看てるのは、信長の指示だと何故か噂になっていて、信長の人気はうなぎ登りなんだ。


 信長自身はよく町を出歩くので、その反応を敏感に感じている。


 年貢を取り立て戦で勝ち領地を守るのは当然だけど、領民の支持が上がれば統治がどれだけ楽になるかよく理解したのだろう。


「農民の子でも構わんのか?」


「やる気があれば問題ないかと。学門を理解することは必要ですから向き不向きはありますが、ダメでも医者の助手にはなります」


「一度親父としっかり話さんといかんな。あの石鹸もなかなかいい。広まれば病が減るのだろう?」


「はい。手を洗うだけでかなり違います」


 まあ信長の領民にも若い女のケティの実力を疑う者が居るが、よく一緒に居る信長は一番見てるから実力を知ってるんだよね。


 衛生知識を広めることとか、早めに医者に行くこととか、医療面の改革をやればやるほどケティは忙しくなる。


 本格的に動く前に助手件弟子が早めに欲しいところだ。


「やれやれ。戦をしてる暇などないではないか」


「戦をする前に勝負を八割は決めたいとこですけどね」


 信長自身は恐らく力で天下を統一する気だったんだろうね。


 オレ達が次から次へとやることにため息を溢しつつ、必要ならばやるしかないと考える柔軟性と決断力はたいしたものだ。


 このまま行けば戦の難易度が格段に下がるかもしれない。


 この時代の農民は領主の指示に黙って従うほど甘くはないからね。




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