表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

44/106

手紙と経過

「またこんなに来たの? 読みにくいんだよね。この時代の字ってさ」


「一通り目は通して下さい。返事は私が書いておきますので」


  夏に入り織田家での日々にも慣れたが、最近はあちこちから手紙が来てちょっと面倒だった。


 しかもこの時代の字って、ミミズが這ったように読みにくいしさ。


 一応睡眠学習にて読み書きは出来るようになったけど、面倒なのは変わらない。


「今川治部大輔義元って本物?」


「駿河の商人である友野家の使いが、津島の屋敷に持ってきたので本物かと思われます」


「四五百年取っておけばお宝だな。中身は茶会の誘い?」


「呼び出して引き抜きたいのでしょう」


 商人への手紙は基本的に返事は決まってる。


 うちは信秀の許可なく取り引きは出来ないと、断りの文句を適当に書いて送り返して終わりだ。


 必要とあらば無関係の南蛮人のフリをして商いをすればいいので、今のところ表向きは尾張外の商人に物を卸す気はなく信秀の方でも適当に断ってもらってる。


 堺の商人からは早くも絹や硝石が欲しいとか手紙が来てたけど、長い目で見るとあそこの力を削ぐのも必要なんだよね。


 ただ今回は義元からの茶会の誘いの手紙が来てビックリ。


 お公家様の義元の顔は見てみたいけど死亡フラグだよね。


「返事はどうしようか」


「それは若様に持っていって下さい。後で謀叛を疑われると面倒です。殿や若様はともかく、家中には私達のことが面白くない人も居るのですから」


 ああ、そう言うことか。


 エルに言われるまで気付かなかった。


 引き抜き出来ればラッキーでダメなら謀叛を噂すると。


 えげつないね戦国時代って。





「そういえば蜂蜜酒人気なんだって?」


「濁酒とは物が違いますからね」


「これが本当の蜜の味ってか」


「確かに彼らにとっても、私たちにとっても蜜の味ですね」


 そうそう。長島から蜂蜜酒の追加を頼む手紙が、仲介してる商人に早くも来たらしい。


 他の商品はその気になれば買えるが、蜂蜜酒だけは今のところうちからしか買えない。


 甘味にもお酒にも飢えてるこの時代では、本当に蜜の味だろう。


 もちろん長島に食い込んだうちにとっても、長島から得られる銭は蜜の味だ。


 銭を搾り取りながら贅沢をさせてあげよう。


 鯨肉ももっとサービスしないとね。


「あと漁業用の網あげたけど、あれはどうなった?」


「上手く使ってるようですよ。煮干しと魚肥は早めに軌道に乗るかもしれません。ただ知多半島の水野家や他の家臣の漁村との差が生まれると、少し面倒になるかもしれませんが。」


「その辺りは殿にお任せでいいんじゃない? 網くらいならあげても驚異にはならないし。まさかタダであげる訳もないだろうしさ」


「ですね」


 それと津島の大橋家にあげた漁業用の大きな網と、この時代でも出来る漁法は上手くいってるらしい。


 大きいのは干物にして売ればいいし、捌いた際に出るハラワタとか小さいのは魚肥になるから無駄はない。


 ラーメンのダシの煮干しも、現地生産出来る日は近いかもしれないね。


 少し気になるのは知多半島の水野と、鳴海の山口なんだけど。


 水野は史実だと武田に内通したとかしないとか。


 それなりの勢力なんだけど、立場が曖昧で今一つ悩むところだ。


 鳴海の山口は史実だと信長を裏切り今川に寝返ったんだよね。


 当時の信長と今川だとどちらが優勢かはっきりしてるし、仕方ない気もするけど、国境近い鳴海でいつ寝返るか分からないのは怖い。


 というかここまで歴史を変えて桶狭間なんて起きるんだろうか?


 信行も居ないし、現状だと織田本家の力を増やしていけば裏切らない気もするが。


 ただどのみち今川は三国同盟が成立すれば西へ来るか。


 北条も武田も強いし、尾張より攻める価値があるとは思えない。


 歴史が変わると先を読むのが難しいけど、歴史通りにすると尾張統一と美濃併合に苦労して、一向衆には散々悩まされるんだよね。


 本当どうしたものやら。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ