勝家の贈り物と新しい鎧
「なかなかいい物ではないか」
「柴田様に頂いたのですよ。先日は丸腰だったので武士らしくしろとお叱りを受けたのでしょうか?」
「そんな理由で太刀など送らんぞ。安くはないのだ」
柴田勝家の家臣が立派な太刀と脇差しを持ってきた。
ちょうど家に信長が居たので見せたら、なかなかの業物らしい。
時期的に信行の一件の後だから、最初に織田家に仕官した時の返礼ではないはず。
オレ普段から刀どころか脇差しも持たないから、一益にも注意されるんだよね。
この時代農民ですら脇差しくらいは持ってるからさ。
まさか超小型の護身用レーザーガンを持ってるとも言えないしね。
当然ながら戦国時代でも刀は高級品だ。
史実だと厳格な武骨者みたいなイメージあるから、まさかの贈り物にビックリしたわ。
理由が分からないけど問題は返礼品だよな。
「返礼品はどうしましょうか?」
「大福でも送ってやれ。あれほど美味そうに食うてたではないか」
「流石に刀の返礼に大福は失礼では?」
「親父の話だとお前が権六にと置いてきた、砂糖大福を嬉しそうに持ち帰ったらしいぞ」
「あれは先日助けられた礼だったんですが」
史実の織田四天王の一人柴田勝家は、プライドの高そうな人ではあった。
ただ織田家にあの人は必要不可欠だし、この先の改革にもあの人の協力は必須だ。
半ばそんな下心と先日の津々木というおバカさんから助けて貰ったという名目で、信行を預かりに行った時に重箱三段の大福を信秀に預けたんだよね。
いや家で大福を五つも食べてたからさ。
まさか大福の返礼に大小揃いの刀はないでしょうに。
「若様。以前話した鎧が届きました」
「ほう。随分質素だな」
「あくまでも南蛮式の鉄砲を、撃てるようにしただけの物ですから」
勝家への返礼品は後で考えることにして、今日は以前話していた火縄銃の命中率を上げる為の、銃底を肩に当てる形にしても仕える鎧が届いていた。
見た目は戦国末期にあったと言われる南蛮鎧に近い物と、それを足軽用に簡素化した物の二種類用意している。
正直防弾性能は現時点ではあまり期待できない。
火縄銃の防御は、大人しく竹束を作るのが一番よさそう。
地金と加工技術が違うから、物としては悪くないけど飾りとかは全くない。
あくまで試作品だしね。
ああ。前に津島でリンリンがあげたヨーロッパのフルプレートの鎧は、なんと那古屋城に信長が飾ってる。
あんな小汚い鎧文化財になるのはちょっと嫌なんだけどな。
そう言えばこの時代に来て知ったけど、この時代の足軽ってかなり適当というかいい加減みたい。
一応領主が陣笠や胴丸という足軽セットを貸すみたいだけど、領主により様々らしいし数には限りがある。
それにあの陣笠とかは、被りにくいみたいなんだよね。
鎧はエルも悩みどころだったらしい。
ギャラクシー・オブ・プラネットのパイロットスーツなんかは普通に防弾性能はあるけど、未来の現実にすら存在しなかったオーバーテクノロジーをここで出すのは流石にね。
現行で用意したのは、ギャラクシー・オブ・プラネットの技術で戦国時代の鎧を作っただけ。
多少の工夫と技術で他よりは性能はいいみたいだけどさ。
「少し使ってみるか」
「それが宜しいかと思います」
武士用の鎧が三つに足軽用が五つ用意したから、この時代の人間に使ってもらいテストする必要がある。
「鉄砲は防げるか?」
「多少は。ただあまり意識すると、重くなるだけです。敵の鉄砲には別に盾を用意するべきです。どのみち離れて撃つ武器ですから」
「であるか」
「盾は竹を束にでもすれば、かなり防げると思われますので簡単かと」
戦場の主役はどちらかと言えば槍だからね。
あまり鎧を重くするのは本末転倒だろう。
信長はエルの説明を聞きつつ新しい鎧と盾を試すべく、明日にでも竹を集めさせることにしたようだ。




