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焼き芋と末森

「これが芋か?」


「甘いな!」


 本当なら石焼き芋にしかたったけど、手頃な石がなかったんで焼き芋にしてみた。


 アルミホイルがないからどうしようかと思ったけど、うちの万能アンドロイドであるエルが見事に焼いてくれたよ。


 蜜芋とまでは言わないがホクホクとして結構甘い芋だ。


 この時代の芋より美味しいはずなんだよね。


「まだこの国にはありませんからね。甘藷とか唐芋とか好き呼べばいいかと。ただ作るなら他国の間者に盗られないようにしませんと」


「尾張ですと知多半島か東の尾張丘陵辺りは、農業をあまりされてないようなので。これがあれば劇的に食料事情が改善します。ただ両方とも現状ではちょっと難しいかと思われます」


「確かに無理だな。知多半島の水野は親父の家臣ではない。尾張丘陵の方はほとんど岩倉の領地だ」


 飢えの心配が減るさつまいもだけど、エルが先に進めなかった理由は今の信長の勢力圏内だと、必ずしも有効に使えないんだよね。


 オレは詳しく知らなかったけど、知多半島とか尾張丘陵辺りでの栽培をエルは検討していたらしい。


 ただそもそもこの時代だと、領主と地侍や土豪の関係がかなり曖昧なのが厄介なところだ。


 信秀は尾張に影響力はあるが、本当に領有してると言えるのは三分の一あるかないか。


 しかもそこだって血縁者が謀反を起こしたこともある。


 知多半島の水野家なんて現状では同盟相手であり、戦略物資になるさつまいもを渡せるほどの信頼はない。




「農業に関しては秋の麦からは収量の多いものを用意しますので、那古屋と末森の殿と若様の直轄地にて、まずは栽培してみることをお勧めします」


「末森か」


「信行様の意志はともかく、信行様を押していた勢力は林様の切腹で大人しくなりました。殿に話して今のうちに若様の方で取り込むべきです。あまり邪険にしますと、新たな御輿を見付けてまた騒ぎ始めますから」


「それほどの価値はあるのか?」


「それを見極める為にも一度は取り込むべきです。どうせほとんどは流されていただけの者ですから。何より身内を固めませんと人が足りません。銭と下賜する物は私どもで用意します」


「であるか」


 たき火を囲みみんなで焼き芋を食べながら、エルは信長に元信行派の取り込みを進言していた。


 正直焼き芋を食べながら話す内容じゃないけど、信長って本当細かいこと気にしないんだよね。


 勝三郎達も慣れたのか気にしないで芋を食べてる。


 みんなエル達が優秀なのは知ってるからね。


「結局銭と物で釣るわけね」


「今回の暴発の原因も銭でしたから、それが一番楽で効率的です。若様の力を見せ付ければ、大半は歯向かう気などなくなりますよ」


「お前達、なかなか腹黒いな」


「腹黒くないと商人なんてやれませんよ。土産は酒と食べ物がいいですかね」


 未来ならで札束で頬を叩くようなオレとエルに、信長は珍しく引き気味だわ。


 信長もまだ経験不足だからなぁ。


 兵農分離出来るまでは、家中を纏めてうまく使わないとやっていけないんだよね。


 下賜する物は食い物が一番だろう。


 量産出来る蜂蜜酒と鯨肉にでもしようか。


 お酒は清酒とか焼酎もゆくゆくは作りたいけど、この時代は食べ物って足りないことはあっても余ることはないんだよね。


 津島と熱田もいろいろやらせてまだ落ち着かないし、しばらくは無理かね。


 宇宙で作った物を明やルソンから仕入れたと言って、少し売るくらいなら構わないか?


 やり過ぎるとあちこち敵に回すしなぁ。


 本当加減が難しい。





 ああ、宣教師の乗る船はエルと相談して、無人潜水艦でルソンに到着する前に沈めることにした。


 スエズ運河もないし遙々アフリカを通って来るから、嵐に紛れて一ヶ所で沈めなければ不審に思われないだろうからね。


 悪いけど宣教師が来るのは出来るだけ遅らせたいんだよね。


 宣教師の中に奴隷貿易と全く無関係とは思えないし。


 それに一神教は他の神を認めないとか、政治や学問に影響を与えたりと、史実のように当面は禁教にした方が良さげ。


 流石に奴隷貿易の船全部沈めるのは、日本国内にあちこち問題が出そうだからしないけど。


 国内の絹や硝石を全てうちが出すのも現実的じゃないし、織田家が大きくなるまではある程度外国に銀や銅が流れるのは仕方ない。


 まさか強制鎖国する訳にもいかないし、南蛮人や明や朝鮮の危険性をこの時代の日本人に教える意味でも貿易は続ける必要がある。


 まあうちが南蛮貿易してることにしてるから、他を潰してうちだけやるのも不自然だしね。


 ともかく信長には家中を纏めてもらわないと。


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