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信長。ご機嫌ナナメになる

「若様。ご機嫌ナナメですね」


「ああ。信行様の件で露骨にすり寄って来てる連中が居てな。そのせいだ」


 信行は後日、家の船で旅立って行った。


 アンドロイドを船長にした擬装ガレオンだから沈む心配もないし、まずは尾張から北を目指して蝦夷地にいく船に乗せてる。


 科学技術の設備のある部屋に信行を立ち入らせなければバレないだろうし、仮に見られても何があるのか理解すら出来ないだろう。


 将来を見据えて蝦夷地のアイヌ民族と、交易を始める予定でその船に乗せた。


 ただ信行が居なくなり一番影響があったのは信長で、勝三郎いわく今までうつけと陰口を叩いていた信行寄りの家臣が、露骨に信長に媚を売りご機嫌ナナメらしい。


「あまり気にしないことですよ。若様」


「気にしてなどない」


「変な忠節があったり信念があるより、使いやすい人達なんですよ。利をぶら下げておけば働くんですから」


「……そんなものか? いざとなったら裏切るだろうが」


「裏切らない人間などそうは居ませんよ。平手様のような家臣が、何人も居るとは思わないことです。気に入らなくても使わないといけない立場になるんですから」


「……かず。お前本当に商人か?」


「裏切りなんて何処にでもありますよ。若様。特に商人なんて利で繋がるだけじゃないですか」


「それもそうだが……」


「忠義とか無くても裏切らない。戦をしない国を作ればいいんです」


 信長もまだ若いね。


 家臣の忠節なんて過大な期待したらダメだろうに。


 信長なりに武士の理想とかあるんだろうね。


 だから地獄への一本道だって言ったのにさ。


 権威と忠節だけで成り立つ国じゃダメなんだよね。


 近代国家とまではいかなくても、国家の仕組みとルールの中で人を競わせないと。


「一馬殿。そんな国、本当に出来るのか?」


「少なくとも今の幕府の仕組みでは無理ですよ。武士も変わらないとダメでしょうね」


 忠節がなくても裏切らなく戦をしない国と言ったら、信長や勝三郎達にビックリされた。


 彼らには夢物語のような感覚なのかもしれない。


 ただ史実に比べればずっと難易度は下がるはず。


「幕府じゃ無理だって……それって」


「まだ先のことですよ。今は銭と力を貯めて、尾張を統一するチャンスを待つしかないですから」


 幕府がどうしようもないのはみんな理解してる。


 それでもいざ幕府を倒すのは、言うほど簡単じゃない。


 他で言ったら馬鹿者扱いされそうなほど。


 仮に信長の尾張統一や美濃併合を早めたとしても、そこから先は並大抵の努力では無理だろうね。


 そもそもの問題として義昭を担ぐかが分岐点になるだろう。


 担がない方がいい気がしないでもない。


 義昭が有能か無能から別にして、史実を見てると義昭に明確な国家ビジョンがあったとは思えない。


 武田や上杉に毛利に本願寺にとあちこちに手紙飛ばして包囲網作ったのはたいしたもんだけど、織田を潰したあとに誰も将軍の言うこと聞かなくなるだけだと思うんだが。


 上杉も義とか言うわりに青苧座を私物化したりしていて、何処まで信じていいか疑問だし。


 まあ武田よりは義に厚いのは確かだけど。


 織田とかオレも人のこと言えないけどね。





「というか一馬。それは何なのだ?」


「芋ですよ。結構甘い芋が出来るんです。時期的にギリギリなんですけどね」


 ちなみにこの日は、家の庭にさつまいもの苗を植えてる。


 食料事情の改善にはこれが一番だからね。


 元はギャラクシー・オブ・プラネットのゲームで惑星開拓で育てていたやつ。


 結構甘くて病害虫にも強いSFのスーパー品種。


 戦国時代に来た時にアンドロイド達が仮想空間の植物がどうなるか宇宙要塞で調べたらしいけど、普通に植えても大丈夫らしいからさ。


 いや、家の家って多分重臣向けの家だから庭広いんだよね。


 火縄銃の射撃に使う以外は馬小屋と鶏小屋しかないし。


「何故ここに植える」


「庭が広いので、畑にちょうどいいかと思いまして。これ痩せた土地でも育ちますし、肥料も要らないんですよ。水やりもあまりしなくていいですから、試しに植えてみようかと」


「それはもっと増やせんのか!?」


「時期的にギリギリなんですよ。本当はあまり派手に動くと困るかと思って、今年は見送ろうとしたんですけどね。ただ信行様の件でやりやすくなりそうだったんで」


 鍬で庭を耕して苗を植えていくオレを、信長達は不思議そうに見てる。


 そんなにオレの行動は理解できないんだろうか?


 ただ名前どうしようか。


 さつまいもって変だよね。薩摩関係ないし。


「お前。そういう物があるなら、先にやるべきであろう」


「外部に流出させたくなかったんですよ」


 痩せた土地で育つと聞いて信長はビックリしてるわ。


 尾張は割と肥沃な土地だからあんまり必要ないんだけどね。


 ただそれでも開拓してない土地や、湿地なんてのはたくさんある。


 とりあえず今年庭に植えて問題なければ来年は作付け面積を増やそう。


 警備は人工衛星と擬装ロボットでやらないと盗まれるだろうな。


 さつまいもは手間がかからないから楽なんだけど。


 そうだ。今日のおやつは焼き芋にしてみようか。



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