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一馬。鶏小屋を作る

 一益を家臣にしたけど、よくよく考えてみたら家には武士らしい仕事って今のところないんだよね。


 平手政秀クラスになると那古屋城に住んで仕事をしてるけど、この時代の織田家でさえ半農の武士がほとんどだった。


 那古屋城の警備に来る武士も基本的にはそれぞれの領地に住んでいて、ほとんどは農家と変わらない生活をしてる。


 領地を治めてると言えば聞こえはいいけど、実質的に武士らしいのは家老クラスかね?


 結局一益は信長や勝三郎達と一緒に、エル達にトレーニングや指導して貰うことにしたけど暇があると仕事を探してる。


「殿。何をされてるので?」


「鶏小屋でも作ろうかなって。毎日新鮮なたまご食べれるようになるしね」


「鶏ですか」


 この日はにわとりを飼おうと屋敷の隅に鶏小屋を作ろうとしていたら、一益が来て説明したら不思議そうな顔をされた。


「明とか南蛮じゃ食べるんだよ。場所もあんまり取らないし、餌もその辺の草でもいいし」


「なるほど。明では食べているのですか」


「ちゃんと火を通さないと危ないけどね」


 禁忌云々以前にたまごを食べようと思わないのが、この時代の一般的な人間なんだよね。


 一益もそうみたい。


 家康は真面目なのか禁忌だと知ってたみたいだけど。


 ただこの時代の人間って本当単純。


 明の名前を出せば大抵納得してくれる。


 ちなみに家畜に含めていいか分からないけど、家にもとうとう馬が来た。


 熱田の商人の一人が家には馬が居ないと調べたようで、馬を手土産に挨拶に来たんだよね。


 商人の情報収集能力は侮れないと実感したよ。


「しかし殿ご自身で、やらなくてもいいのでは?」


「私は元々武士じゃないからね。若様にも言ったんですよ。これからも武士らしく出来ないって」


「それでもよいと?」


「ええ。好きしていいと言われたんですよ」


「やはり並の御方ではござらんな。普通はもっと体面を気にしまする。特にあれほどのお立場ならば」


「そんな人に仕える気はないからね」


 一益はオレが自分で鶏小屋を作るのを不思議に感じ、理解出来なかったようだ。


 商人らしくもないし武士らしくもないとでも感じたのかな?


 鶏小屋といっても日曜大工みたいなものだし、元々リアルでは農家をしていたから簡単な物なら自分で作れる。





「見たことがない形ですが、いい釘ですな。形が均一で真っ直ぐです。大工道具もですが」


「いいところに目をつけるね」


「忍の心得です。道具や釘一つ見ても多国が欲しがるかもしれませぬ」


 そのまま一益は真面目なのか手伝ってくれたので、二人で鶏小屋を建てていたけど、突如オレの使ってる大工道具と釘を見てその価値を教えてくれた。


 未来だと普通の大工道具と釘だから何気なく使ってたけど、この時代の物とは微妙に違うからね。


 目のつけ所が凄い。


「困ったもんだよね。狭い国の中で戦ばっかりしてるんだから」


「狭いですか?」


「明や南蛮と比べたらね」


 未来から考えると一つの県かその半分の範囲で、多国と言いチマチマ戦ばっかりする。


 食べ物が足りないという問題があるにせよ、どうしようもない時代だよね。


 幕府も朝廷も統治能力ないし。


 一益は狭いという言葉に引っ掛かりを覚えたらしい。


 知らないからね。


 この時代の人達は世界の広さを。


 本当。知らないってことは怖いもんだと思うね。



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