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津島と蜂蜜

「今度は何を持ってきたのだ?」


 信長達の応急手当ての授業に前田利家とジュリアの槍の勝負が何日かに一度の割合で日課になる中、新たに船が津島に到着したとの知らせを聞いたオレとエルは信長とお供の皆さんと津島の屋敷に来ていた。


「鯨ですよ。あと椎茸と蜂蜜もありますね」


「鯨か。蜂蜜も運んできたのか?」


 運ぶ物が多いので週に一度はガレオン船で津島に物を運んでるんだけど、おかげでうちの船はすっかり有名らしい。


 ただこの時代だとガレオン船を湊に直接接岸出来ないので、荷下ろしが一苦労だけど。


 それと最近は近隣の商人が集まって来ているとも聞いてる。


 ただ細かいことは津島を治めてる大橋家に任せてるらしく、うちはあんまり関わってない。


「砂糖より売れそうなんです。お隣にお金持ちの坊さまが居るでしょう? そっちに食い込もうかと思いまして」


 信長は今回運んできた物があまり珍しくないからか反応が鈍いけど、金を稼ぐには需要がある物じゃないとね。


「若様。お久しゅうございます」


「重長か。久しいな。いかがした?」


「はい。久遠殿が新しい蔵を欲しているようなので、ご案内をと」


 荷物は一旦津島の屋敷の蔵に運ばれてるけど、そこに30代くらいだろう武士が姿を見せた。


 彼が津島を仕切る大橋家の当主の大橋重長。


 オレも信長に仕えた後に挨拶に来たので、全く知らない人でもない。


「もう蔵を増やすのか?」


「こことは別に蜂蜜の酒を造る蔵が欲しいのですよ。簡単ですし売れそうなんです」


「久遠殿の蔵には兵を配するようにと、殿からも言われてますので、私も中身の確認を出来ればと思いまして」


 オレ達が津島に屋敷を貰って、一番大変なのはこの大橋重長だろう。


 絹を始め高級品がある津島の屋敷には警備の擬装ロボット兵が居るが、同時に大橋重長の配した兵も常時待機している。


 その他にも多国の商人や間者の対応に苦慮してるようで、うちからは絹の反物に酒や食材を無償で融通していた。


 津島を仕切る大橋家が津島の商人の産物を知らぬでは恥をかくし、訪ねてくる多国の商人などに見せたりするにも必要なのだ。


「若様も大橋様もどうぞネ」


「うむ。なかなかいいな」


「これが蜂蜜の酒ですか」


 蔵を案内してもらう前に津島を任せてるリンリンが、すでに完成してる蜂蜜酒を信長や重長とお供のみなさんに配る。


 基本的に甘党の信長の反応はいいし、大橋重長の反応も悪くない。


 甘味が高級品だし酒もどぶろくよりはね。


 船の輸送能力の観点からも、蜂蜜酒は津島で造ることにして、そのうちどっかの商人に任せよう。


 今回運んできた蜂蜜自体は実は宇宙要塞で人工的に造り出した人工蜂蜜なんだよね。


 成分的にも味的にも変わらないからさ。


 養蜂は日本蜜蜂に向かないし、やはり尾張で量産するには史実の西洋蜜蜂でも必要か?


「もう鯨も焼いて一杯やるか?」


「ダメですよ。せめて蔵を決めてからにして下さい」


 信長も大橋重長も蜂蜜酒をもう少し飲みたそうにしてるから、いっそ今日は酒盛りでもと考えたけどエルに怒られた。


「若様。実は大きな魚取りの網を運んで参りましたので、漁法の指導と合わせて何処かの魚村で使わせてみたいのですが。」


「重長。任せてよいか?」


「はっ。」


「親父には言うておく。ただし盗まれぬように気を付けよ」


 それと今回はこの時代では見かけない大きな網を、幾つか種類別に運んで来た。


 伊勢湾は漁業資源が豊富だからね。


 とりあえず網と漁法を幾つか伝授して、どうなるか様子を見ることにした。


 うちで船を増やしてやってもいいけど、領民の生活も良くしないとね。


 エルが信長にそれを相談したら、信長は即決で一緒に居た大橋重長に任せた。


 うつけと言われてるけど、那古屋とか津島だと領民には意外に評判いいんだよね。


 実は鷹狩りの獲物を近くの農家に分けたりとかしてるし、信長って変に人を見下さないからかね。


 ああ、大橋重長は家中では信長派でも信行派でもない中立みたいだったけど、最近はうちの影響で信長寄りになりつつある。


 織田家中でも実はあまり知られてない、信長がオレをわざわざ召し抱えに津島まで来た事実を知ってる一人。


 うちの財力で信長の影響力が、今後どれだけ高まるか理解してるんだろうね。


 実際津島での商いにこの人の協力は必要不可欠だし。


 蜂蜜と鯨も多目に進呈しておこう。



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