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家康。卵焼きを食べる

「凄いもんですね」


 この日はいつものお供の皆さんの他に花見や先日信秀に会いに行った時に居たメンバーなど五十人くらい居る。


 正式な家臣から近くの農家の悪ガキのような人まで居るようで、未開の森や草むらなどで獲物を探させているらしい。


「人を使うのは慣れていよう」


「そうですけど武家と商売の人間は違いますよ」


 オレと家康は鷹が居ないので見学してるけど天気もいいし自然の中に居るのは悪くない気分だ。


 集めた人達に指示を出す信長の姿を見てるとここが戦国時代なんだと改めて感じる。


 近代だと狩猟は主に銃を使っていたからね。


 昔テレビで鷹狩りを見たのを思い出したよ。





「かず。これはなんだ?」


「おにぎりですよ」


「この黒いのは?」


「ああ、海苔です。海苔を板状に固めたんですよ。美味しいですから食べてみて下さい」


 そしてお昼になると何故か当たり前のように、オレがみんなの分の昼食を振る舞うことになる。


 こう言うのって普通は信長の役目だと思うんだけど、噂が広がってるみたいでみんなお昼を楽しみにしてるんだよね。


 おかげでこの日はお昼の弁当を運ぶ為の馬を一頭連れてきてる程だ。


 メニューは梅干しのおにぎりと卵焼きに鶏の唐揚げとぬか漬けになる。


 ただ信長達はおにぎりに巻いた海苔に注目してた。


 卵焼きに注目すると思ったんだけど。


 海苔って江戸時代にはあったイメージがあるからこの時代にもあると思ったんだけど。


 正直エルは詳しく歴史を知ってるがオレは曖昧なんだよね。


 肝心のエルは食べ物は早めに広めるつもりらしく、あんまりこの時代にあったのかは気にしてない。


「海苔美味めえぞ!」


「若! 中に梅干しが入ってますよ!」


「来てよかった!」


「お前ら騒がずに食え!」


 そして相変わらずの欠食児童達は、我を忘れたようにおにぎりにがっつく。


 おかずもたくさんあるのに。


「これは何でしょう?」


「鶏の卵焼きです。美味しいですよ」


「たっ卵!? 卵は食べると良くない事が起きるとか……」


「それは仏教が勝手に作った迷信です。明や南蛮では普通に食べてますし私もずっと食べてます」


 おにぎりに夢中なみなさんを置いといて、おかずに箸をつけてるのは信長と勝三郎達のうちのご飯に慣れてる人達だ。


 ただ卵焼きを珍しげに見ていた家康は食べようとして、それが仏教で禁忌の一つになってる卵だと知り慌てちゃったよ。


「竹千代。問題ない。オレも以前から食べてるからな」


「はあ」


「竹千代殿。一つ後学の為に覚えておいてください。世界には仏教のような宗教が、たくさんあるんですよ。その宗教の数だけ教えてることが違います。この国では禁忌でも、他の国ではそうでない物もあります。でもみんな普通に生きてる人はたくさん居ます」


 信長はその点で凄いね。


 出した物は何でも食べるんだから。


「……美味しい」


 竹千代は信長とオレの言葉を、噛み締めるように聞いた後に卵焼きを食べた。


 その瞬間、初めて子供らしい笑顔を見せてくれたよ。


 宗教の話はどこまで理解したかは分からない。


 まだ本当に幼いからね。


 ただこの卵焼きが家康にとって少しでも明るい未来の希望となればいいんだけど。


「かず。坊主どもはそれほど教えてる事が違うのか?」


「ええ。違いますよ。南蛮人の神なんかは、仏とも神道の神とも違いますから。それに南蛮の坊主は基本的に自分達の神以外は認めてませんし。この国でさえ同じ仏教でも教えてることが全く違うでしょう?」


 一方信長は宗教の話に食い付いてきた。


 神を否定してる訳でもないようだけど世界には宗教がたくさんあって、教えてることが全く違うと聞いて驚いてる。


 まあ本来は知るはずのないことだしね。


 ただせめて神と宗教がイコールではないことは織田家の人達には理解して欲しい。


 この先の戦いの為にも。


「それはオレのだぞ!」


「うっせえ! やるか!」


 ほとんど誰も聞いてないけど。




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