信長。靴を履く
「うむ。なかなかよいな」
「サイズは大丈夫なようですね」
毎日のように家に来ている主君信長はこの日、革製の乗馬用ブーツを履き満足そうな表情を見せてる。
元はと言えばオレ達が普段はこの時代に合わせて着物を着てるけど、流石に靴は草鞋を履かなくて普通に靴を履いてたんだよね。
それを見た信長が何時ものように欲しいと言い出したので、サイズを測り作ったのが今日届いたんだ。
「南蛮人はこんなの履いてるのか」
「それは馬に乗る用の靴ですから。明などでも形は違えど靴を履いてるそうですよ。この国は何故か無いですけど」
信長のお伴の皆さんは見慣れぬ乗馬用ブーツを興味深げに見てる。
いつもオレの履くウォーキングシューズとはまた形が違うからね。
形はこの時代をそれほど気にしてなく、履きやすさを第一に考えた物だけど、この時代の日本は何故か靴がないんだよね。
貫という馬に乗る時に履く革靴に似た物はあるけど。
原因の一端は殺生と肉食を禁忌にした朝廷にあるんだろう。
歴史を見ると一般庶民や武家は意外に肉食はされてるけど、この時代では肉食用に家畜として飼うまでは至ってない。
元々肉食を禁じた理由はまあ細かく上げるといろいろあるんだろうが、最大の理由はまたもや仏教らしいしね。
栄養や健康の面からも人には動物性タンパク質などは必要だ。
動物の皮だって靴以外にも使い道はある。
卵に牛乳や食肉や皮の為にも畜産は早い段階で始めるのは当然必要だけど、先のことを考えると国策にまで影響してる仏教は、いずれ一度叩き潰した方がいいのかもしれない。
肉食の禁止は僧侶と公家や朝廷だけでやってればいいんだ。
ただ問題なのは信長でさえ、そこまで仏教を否定はしてないんだよね。
史実の信長でさえ武装解除はさせたが一向衆ですら禁止してないはず。
そういえば平手政秀がラーメン屋を出したいと言ってきてオレ達を驚かせた。
ラーメンを広めるのは構わないんだけど、そんなに気に入ったのかね?
店はエルやケティにやらせるより商人に任せてはどうかと相談された。
細かいことはエルに任せたけど、当面は作り方を教えて材料を売ることで店を出すことにしたらしい。
小麦粉と醤油とかん水くらいは、商人に教えて作らせる方がいいだろうけど、売るまでには少し時間がかかるだろうからね。
もしかして肉食を世に普及させるには、那古屋と熱田と津島なんかで食い物を広めた方がいいのかな?
なんかそれが一番手っ取り早い気がしないでもない。
最初のラーメンはアッサリした昔ながらの醤油ラーメンでいいだろうけど、その結果次第では牛乳や肉料理なんかも広められるかもしれない。
「では鷹狩りに行くぞ」
「鷹狩りですか? やったことないんですけど」
「そうか。ではたまにはオレが教えてやろう」
戦国時代にラーメン屋かとちょっと考え込んでると、ブーツを履いた信長がさっそく鷹狩りに行くと言い出した。
そういや信長って鷹狩り好きなんだっけ?
オレが鷹狩りを未経験だと知ると、信長は嬉々として鷹狩りを教えてやると張り切ってる。
鷹って怖くないのだろうか?




